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これは私が小学2年生くらいの頃の話。その頃の私は普通の女の子だった。友達もたくさんいて、明るくて、自分が可愛いと思えていて、毎日楽しいと思えていて。本当に幸せだった。私の居場所がここなんだって思ってた。
だけど、そんな幸せだった日々は、ある日突然。音を立てて崩れ始めていった。
「お前キモい。」
「え…?」
ある日、同じクラスだった男子から発せられた一言。たった一言、だけどその一言は、私の胸にグサリと刺さった。痛かった。苦しかった。今まで私は、悪口を知らないような存在だっから、更に苦しかった。
その日から、クラス内で私に対する虐めが始まった。悪口や陰口、酷い時は足を蹴られたりお腹を殴られたりするときもあった。だけど、友達や先生、親や家族に心配をかけたかなんかなかったから、私は必死に耐えていた。耐えていればいつか終わるって、そう信じていたから。
「ねえねえ!」
ある日、帰りの会のあとに仲が良かった友達に声をかけられた。
「どうしたの?」
「いつもそのキーホルダー持ってるでしょ?それ頂戴!」
「…え?」
私はその子が言っていることがわからなかった。だってそのキーホルダーは、少し前に離婚したお母さんに昔貰ったキーホルダーだったから。お母さんが大好きだった私にとってそのキーホルダーは、お母さんを感じれるお守りみたいな存在だったから。
「…いやだ。」
勿論、私はそう言った。だってそれは、世界にたった一つの宝物、崩れた私の心を唯一癒してくれる世界で一番大好きだった人からもらった大切なものだから。だけどその子は。
「いいじゃんか別に!私はそれが欲しいの!ね?いいでしょ?」
「…わかった、いいよ。」
「やったー!ありがと!」
私はいいよ。そう言ってしまった。言いたくなんかなかった。半ば強制的に言わされたようなものだった。正直、クラス内での虐めよりも辛かった。その日の夜は、布団に潜り込んで1人で泣いた。必死にお母さんに謝っていた。
「ごめんなさい…ごめんなさい…。お母さんが折角くれたのに…ごめんなさい…。」
もう届かないとはわかっていても、謝らずにはいかなかった。後から調べてわかったことだったけど、お母さんがくれた梟のキーホルダー。その意味は、「幸福を招く」。お母さんがこの意味を知っていたのかはもうわからないけど。私はお母さんが願ってくれた幸福を捨てたんだ。そう思ったら、更に涙が止まらなかった。
学校に行くと、崩れた私の心に追い打ちをかけるように言葉が飛んでくる。
「気持ち悪い。」
「臭いから近づくな。」
「なんでいるの?」
「……。」
椅子に座って静かにしていても、向こうから近づいて悪口を言ったり、離れたところから笑ったりしていた。
「大丈夫?あいつらのことなんか気にしなくてもいいよ。」
そんな言葉さえも、私への悪口に聞こえてしまう。もう昔の私はいない。友達に笑顔を向けて話す気力も失っていた。
一度だけ、お姉ちゃんがお父さんに私の虐めのことを言った。もしかしたら、ちゃんと自分からことの顛末を言えば現状は変わるかもしれない。そう思って言おうとしたけど、私の口から出た言葉は。
「…大丈夫、自分でなんとかできる。」
そんな言葉が口から漏れていた。
「そうか、やったら自分でやりなさい。」
お父さんは疑うことなく私にそう言うと、スマホに目を向けた。私は誰とも目が合わせられなくて俯いていた。なんであんなことを言ったかなんて自分がよくわかっている。お父さんに相談なんかしても、対処なんかしてくれない。きっとこのこともすぐ忘れてしまう。だから私は言わなかった。言えなかったんだ助けて。辛いよ。しんどいよ。こんな言葉を言ったところで、お父さんはなんとも思わない。だってお父さんは、あいつは。″人なんかじゃないんだから″。お母さんも、あいつのせいで壊れたんだ。あいつが私の、私たちの幸せを奪っていった。そんな奴に虐められていることを言ったとしても。
「そんなの事実だろ。自分にも欠点があるからだ。」
そう言われるんだから。あいつには何を言っても無駄なんだ。あいつに期待なんかしてはいけない。あいつだけじゃない。もう私は誰にも期待なんかしたくなかった。期待して、信じて裏切られてから苦しくなるくらいなら、初めから信じない方がいいんだ。そうすれば苦しさも減る。それでも、信じたかなんかないって、期待なんかしないって思ってもしてしまうんだ。
「可愛い!」
「綺麗なんだから自信持ちなよ!」
「磨けばダイヤモンドになれる!」
そんな言葉を鵜呑みにしそうになる。そんなわけない、ただのお世辞だ。心の中ではそんなこと思ってないんだ。寧ろ、醜い私を見て嘲笑っているんだ。
どうしてもそう思ってしまう。どれだけ仲がいい友達からの言葉でも、どれだけ信頼できる人からの言葉でも、頭の中で勝手に酷い言葉に置き換えてしまう。そうやって被害妄想を繰り返してしまう。
「なんで私だけ…。誰か助けてよ…。」
そんな声は誰にも届かない。届けようと思わないから、届かないでくれと願っているから。この声が届いて仕舞えば、私の心は雪崩のように崩れて、治せないところまで行ってしまうから。まだ耐えられる。まだ治せる。まだ完全に崩れていない。まだ、生きている。
………。ねえ、教えてよ。
私は、一体何のために生きているの?
あの人が大好きだから?あの人と一緒にいたいから?なら、″あの人がいなくなって仕舞えば″、私はどうすればいいの?誰の、何のために生きていればいいの?
親のため?家族のため?友達のため?将来のため?
そんなの、理由になってないよ。大人の良い都合で、そんなの生きる理由なん何ならないんだよ。それなら、″自分自身のため?″
……もう心が壊れてしまっているのに。
どうやって、自分のために生きろって言うの?
ねえ、教えてよ。答えを知っているんでしょ?教えてよ、私が生きている理由を。私が生きる理由を、一言一句違わず、全部、正直に。