どういうこと?
もしかしてこの世界はハロウィンにしか
来れないの?
そんなの絶対嫌だ。
「….無理」
「ダメだよ。卯川には家族がいるじゃん」
「じゃあ来年のハロウィンには会いに来てもいい?」
「それまでに鏡が捨てられるかもよ?」
なんで別れ際にそんな悲しいことを
言うのだろうか。
「私は今日のこと忘れないよ。一生」
「….みんなそう言って忘れてくんだよ」
「私は忘れない」
「蒼空が好きだから」
そう言うと蒼空は目を丸くする。
そして下を向いてこう言った。
「じゃあ来年のハロウィンの日に会いに来て」
今、蒼空の顔はどんな顔をしているのだろう。
泣いているのだろうか。
それとも….
下を向いてて全く分からない。
でも私は無理に見ようとはしなかった。
「分かった。約束ね」
「うん。約束」
そう言って笑う蒼空の顔は
最初に見た無愛想な顔とは全く違い、
完全に心を開いてるような
穏やかな表情だった。
私は目を開けると鏡の前に立っていた。
もうハロウィンは終わったのだ。
鏡に手をつけてもあちら側の世界には
行けないようだ。
周りを見渡すと、
いつものハロウィンの後とは違い、
会話の中にオバケの話は一切無かった。
家に帰ってお母さんにオバケの話をしてみたが
全く話が通じなかった。
まるで元々
“ こんなこと ” が起こっていなかったような。
その日からハロウィンはオバケを捕まえて
食べるという行事から一転し、
仮想をして街を歩き回るという行事に
変わった。
これからもハロウィンは後者のままの行事で
いて欲しい。
私はそう思った。
今日は私が嫌い ” だった ” ハロウィンの日。
私は今日もまたあの白い世界で
ある人に会いに行く。
私だけが知っているあの場所から。
「蒼空、ただいま」
「おかえり、水雲」
𝐹𝑖𝑛.
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