ラクシル様の発言に戸惑い変な声を出してしまった。
なるほど。僕を見定めたのって婚約の話をするためなのか。
一応他の人の意見として父上はどうなのだろう?
反応を窺うため、隣に座る笑顔の父上に聞く。
「父上はどう思われますか?」
「婚約の話かい?よかったじゃないか」
「キアン殿は賛成か!」
「はい」
なるほど。父上は反対してないと。
両家で反対している人はいない。
後は当事者のアレイシアに話を聞こう?
これはあくまで確認だ。
アレイシアが拒否したい気持ちがあるなら優先させたいし。
「………」
『ドクドクドクドク』
アレイシアは僕を見つめて……フリーズしていた。
この鼓動、今までで一番早いかもしれない。
「あ、アレイシア嬢……大丈夫ですか?」
「………」
「……はぁ。リタ」
「はい……アレイシア様?」
ラクシル様が何かを察してかリタさんに声をかけ、リタさんはアレイシアの肩を軽く揺さぶり名前を呼ぶ。
何か手慣れているようなこの流れに僕は戸惑うも、すぐにアレイシアは覚醒した。
「……何でしょうかアレン様」
「……いえ、なんでもありません。……アレイシア嬢は僕との婚約についてどう思われますか?」
「わたくしはお父様の意向に添いたいと思います」
機械のような定例文。
何となくだがある憶測が浮かんでくる。
アレイシアが感情のない人形なんて呼ばれた理由はまさか重度の緊張が原因ではないのかということ。
「アレン君、どうしたのかな?私の記憶が正しければ昨日、娘に見惚れたと言っていたが。そんな君にとってはこの話は良いことだと思うのだが……違うのかな?」
いや、違うんですよラクシル様。
だから、笑顔で威圧するのやめてください。本当10歳の子供向ける顔じゃありませんて。
少し確認してただけなんですよ。
「アレイシア嬢と婚約が出来ること、この上なく嬉しく思います。アレイシア嬢の意思を優先したいと考えての発言です」
「そう言うことか!なら、遠回しに確認せず、初めからそういえば良いだろうに。そう言った気遣いができるとは私の目は曇っていなかったようだ。これから娘を頼む」
「はい」
その後婚約の手続きした。
それにしても意外であった。アレイシアの感情のない人形と呼ばれた正体が単なる緊張のしすぎだったとは。
でも、だから同情してしまう。
乙女ゲームのアレンには誤解が解けることはなかった。
可哀想だ。
婚約終了後、アレイシアとリタの2人が見送りをしてくれた。
アレイシアと少し話がしたかったのだが、用事があるそうでまた後日お茶会の約束をした。
どうにか、事が丸く収まり安心するも、今後どうすれば良いか、小難しいアレイシアとどう向き合って行けば良いのか考えよう。
そう思い、僕と父上は馬車で自分達の屋敷に帰ったのだった。
ん?何かアレイシアたちが話してる?
馬車で今後の方針を考えていたら、後ろから声が聞こえた。
『リタ、アレン様との婚約どう思いますか?』
『お似合いだと思いますよ。会って2日でアレイシア様のこと理解されてますし。運命かもしれませんね』
『運命!?……ごほん!……良い関係が築ければ良いのですが……大丈夫でしょうか?』
『アレイシア様が素直になりさえすれば簡単ですよ……それで、次のお茶会どうするのですか?二人で会うのが恥ずかしいって逃げたわけですし』
『ち…違うわ。アレン様と対面するには何かと準備が必要だったんだもの』
『なるほど。つまり心の準備が必要だったと』
『な?!……ち、違うわ!あの…その……そうじゃなくて。ほらドレスとか……お化粧とかが必要かなと思いまして』
『なら明日にでもベリッシモ通りにドレス新調に行きましょうか。あそこなら一週間くらいで用意してくれるお店ありそうですし。その間にアレイシア様の言う必要な準備もできるんじゃないですか?』
『……そうするわ』
と、こんな会話が聞こえてきたのだが……
少しクセになるかもしれない。
今の会話で確信した。
アレイシアは重度のあがり症なのだと。
表情が変わらないのは緊張により表情筋がこわばっていただけ。
素直に話せないのは緊張しすぎで定例文のような話し方になってしまう。
「……なんだよそれ……可愛すぎだろ」
ニヤケが止まらず思わず両手で口元を押さえてしまう。
「どうしたのかなアレン、大丈夫かい?」
「はい」
父上に心配かけてしまった。だが、それでも悩みが増えるばかり。
どうやって仲良くなればいいんだ。
……今度何かプレゼント買ってみるか?
母上と出かける約束あるし、帰ってから母上に話してみよう。
ゆっくりアレイシアに歩み寄っていこう。
とりあえずお茶会まで一週間。婚約者と仲良くなれるよう色入りと考えてみよう!
〜第一部完結〜
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