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まさか熊と取っ組み合いをする事があるとは思わなかった。
さすがに一方的に受けるわけには行かないと、迎え打ち組み合う。爪が肉に食い込もうとしてくる。我が筋肉はそう易々と突破されはしないが、この状態はよくない。
脚を払い横倒しにする。熊の腹を蹴り上げるが構わず背中からタックルをしてきた。
この辺の動物は突進するのが流行りなのか⁉︎ よろけた俺に熊の右腕の一撃が炸裂する。耐える筋肉! この身に一条のキズもつける事叶わず!
その鼻っ面に渾身の右パンチをお見舞いした。熊はよろめき這いつくばり、突進して頭突きをしてくる。
予想通りに来た攻撃を衝撃の直前に頭を押さえつけそのまま持ち上げてっ、パイルドライバーっ!
こうしてまた増えたオブジェ。もう油断しない。これで終わりなわけがない。また新たな熊と対峙して俺は闘志を燃やした。
「ずいぶんと欲張ったものだな。1頭で良いものを……」
また新手かと身構えた先にいたのは様子を見に来たレオだった。
俺の筋肉にはキズひとつなく、自分でもその強靭さに呆れそうではあるが体力はそうではない。さすがに熊は埋めるには重すぎた。
「もう鎧は脱いでいいぞ。こちらへ渡せ」
言われて渡す。なんだか分からない解放感に安心してへたり込んだ。
「……1時間ほど休憩して帰るぞ。」
街に戻った俺たちはその脚で鍛冶屋に向かった。
カランカランと鳴るドアから入り、戦果報告だ。
ダリルは今日は1人だ。
「なるほど、やけに時間がかかると思っていたら、こいつを服の下に着ていた、と」
気のせいかレオを睨むようにそう言うダリル。すこしバツの悪そうな顔をするレオ。力関係が見えんな。
「まあいい、次の段階に進めてしまおう」
レオは頷き俺に「明日またここに来い」とだけ言った。
今日はギルドから流れてくる獣肉の内訳がいつもと違い、市場からの買付けの面々がざわついているのが分かる。
「熊が5頭に鹿が8頭。猪が8頭にウサギが22羽……野鼠なんていうのも36匹だがこれは物好きが買うのかな。しかし狩人たちが荷車で持ち込んできたらしいが、昨日は何があったんだ? 天変地異の前触れじゃないだろうな?」
おおよそそんな会話が至る所で行われるのを聞きながら、書類を処理していく俺はただの鍛錬では得られない満足感を覚えていた。