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後ろで一つにまとめられた白い長い髪が生きているかのようにうねった。

透き通るような肌色に、貫くように鋭い赤い眼光がこちらを確実に睨んでる。

「なに見てんだよ!」

「わ、わかったから!蹴るなよ!イタッい、いたいって!」

脛をさすりながら資料を手に取る。

「、、、。」

地下から出てきてすぐは、三日間、任務には参加出来ない。まずは、生活。今まで普通の生活を送っていなかった可能性があれば、その修正を行わなくてはならない。

「えーと。まずは、部屋に、行こうか。」

「あ?」

口が悪いなあ、、、。

ぱっと見は少女なのに、中身はヤンキーかよ。

思わずため息を吐く。

「三日間、俺は君と一緒に生活しなくちゃいけないの。決まりだから、文句言わないでね。」

出来るだけ丁寧な言葉を使う。

こんなに口が悪い子だけど、一応ケアが必要なんだから、あまり刺激しない方がいいだろう。

「・・・。」

不満そうな顔が何もない空間を睨んでいる。

ふと窓を見ると、水滴が流れていた。

「雨か、、。」

「あめ、。」

そう言うと、元々大きな目を見開いて窓にへばりつくように外を見る。

「もしかして、雨、知らないの?」

「阿呆!知ってるに決まってる。、、、ただ、見た事無かっただけ!」

「そ、そう、なんだ。」

雨を見た事がないと言う少年はまた、外を見つめ始めた。

彼は、どうしてケアが必要なんだろう。別に精神的にも、身体的にも傷があるようには見えないのだが、、、。

「そろそろ部屋に行こうか。」

「、、、。」

窓にへばりついて離れない。

集中しているのか、全く反応がない。

仕方なく肩を叩こうと手を伸ばした。

「ねえ、」

「ーーーっ!!触るなっ!」

手を勢いよく叩かれてしまった。

「!?ご、ごめん。反応が無かったから、。」

赤い瞳に警戒と殺気が混ざる。

「お前らみたいな、何も知らねえ偽善者集団が俺達に触るんじゃねえ!」

ーーーー偽善者集団ーーーーー

ーーーーーーーー俺達?ーーーーーーー

険悪な空気が漂う。

少年が牙を剥き出して威嚇する。

俺の方が背丈は大きいのに、押されてしまう。

「ごめんってば、そんなに怒らないで。、、、いっっ!!」

左目が痛んだ。

これは、目が痛いのでは、ない。

目元にある傷が、痛んだ。

昔、幼い時についた三本の傷。

雨だから、だろうか。


目を押さえてうずくまった。

「あ?、、、おい!」

少年の声がした。

名前は、えーと

そうだ、



ヒュイ


「、、、ここは、?」

白い天井と、白い壁、いや、カーテンか。

「仮眠室。」

ヒュイがこちらに目を向けないまま端的に答えた。運んでくれたのか?

そうか、あの時俺は倒れたのか。

ゆっくり起き上がる。

もう、傷は痛くなかった。

すると、勢いよく白いカーテンが開く。

「お前な、雨降るたび倒れんのやめなよ。」

真っ白な部屋に似合わない真っ黒な高いハイヒールに赤い唇。ボディラインを強調させるようなピタッとした黒のワンピース。高い場所に結われた真っ黒な髪。

「そんな無茶言うなよ、カムナ。俺だって好きで倒れてるんじゃないんだ。」

「ふぅん?じゃあその隣の相棒ちゃんに頭下げときな。あんた担いで来たのよ。ほっときゃいいのにね。」

「へ?」

そうなのか、、、。

チラッと彼を見るとそっぽを向いていて、顔が見えなかった。

「ありがとう。」

そしてぼそっと一言。

「、、、別に。」


「ここが君の部屋。そんで向こうにお風呂とトイレがあるから。、、、一応なんだけど、」

「?」

「お風呂一人で入れる?」

もし入れないなら、俺が一緒に入らなきゃいけない、それはまじ勘弁。

「馬鹿にすんなよ!」

なんっで脛ばっかり狙うんだよ!

「イタッ!ご、ごめん、!」

脛をさすりながらロッカーを開ける。

「ここに何着か服があるから、好きなの選んでね。、、、ーって、白ばっかだな。」

ロッカーには白いジャケット、白いTシャツ、白いノースリーブのフード付きトレーナー。

白ばっかりで、唯一黒いズボンが二つある。

「、、、今度服を買いに行こう。」

流石に、な。

「いい。」

「え?」

「別に要らない。そんなに服持っててなんになんの?着れればいいだろ。」

「た、確かにそうだけど、、、。」

ロッカーを閉じる。

要らないなら、まあいいか。

「布団は自分で好きな時に洗濯してね、さっきの廊下の奥に洗濯機があるから。まあ、部屋の説明はこんぐらいかな、明日は共同スペースの説明するから。今日はもう休もうか。俺は隣の部屋にいるから、何かあったら呼んで。」

まあ、呼ばれないだろうけどね。

部屋を出ようとドアに手をかける。

「おい。」

声をかけられると思わず、

「へ?」

変な声が出てしまった。

「、、、、食事、それと明日の起床時間。」

食事、ずいぶん丁寧な言葉だな、、。

彼にとっての食事は、まあ、、、血か。

振り返り洗面台の方を指差す。

「ああ、それならそこの冷蔵庫の中だよ。それと、起床時間は決まってないから明日は好きな時間に起きて良いよ。俺は部屋にいるから、起きたら教えて。」

ちらっと彼に目を向けると驚いた、と顔に書いてあった。

「どうしたの、」

「・・・何でもない。」

よく分からなかったが、部屋を後にした。


起床時間の設定なし。

食事の時間指定も、量の制限も無い、、、。

何の制限や指定も無い。

服だって自由。

誰からの監視も無い。

発言も自由。

行動範囲も自由。


何をすれば良いのか分からず、その場に座り込む。いつもと違って柔らかいカーペット。

何もする事が無い。

喉も乾いてない、ねむくもない。


正座してみる。

あぐらをかいてみる。

うつ伏せになってみる。

仰向けになってみる。

天井を凝視してみる。

フローリングの板をなぞってみる。

布団に顔を押し付けてみる。


ふと、時計に目を向けた。

長い針が1に、短い針が7の所にある。

、、、、、、。

七時一分。

いや、違う、七時五分か。

時計の針の音が雨の音と踊り合う。

「、、、静かだな、、、。」

こんなに静かなのは、初めてだ。

なんだか、落ち着かない。

前はずっと、望んでいたものなのに、、、。



「やっぱ、お前がいないとどんな場所だろうと

つまらないよ。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーヒュイ。」


静かな世界で、一人、目を瞑る。

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