その日の撮影の合間、渡辺翔太と宮舘涼太は二人、自販機が置かれた廊下のベンチに座っていた。 いつもなら他愛もない話をしている時間だが、今日は重い沈黙が流れている。
先に口を開いたのは渡辺だった。
💙…あー…なーんか調子狂うわ
独り言のような呟きに、宮舘は隣に座ったまま、視線だけを渡辺に向けた。
💙最近の康二、マジで何考えてんのかわかんねぇ。ヘラヘラしてるか、隅っこで黙ってるか。
💙…前は、もっとうるさかっただろ、あいつ
その言葉には、苛立ちと、それと同じくらいの戸惑いが滲んでいた。
以前、Aの言葉を信じて康二に「ちゃんとやれよ」と言ってしまった手前、今更心配しているなんて素振りは見せられない。
そんな不器用さが、言葉をより一層トゲのあるものにしていた。
宮舘はペットボトルのお茶を一口飲むと、静かに問いかけた。
❤️本当に、そう思う?
💙は?なにが?
❤️俺たちの知っている向井康二は、そんな簡単に天狗になったり、手を抜いたりする人間だっただろうか…
核心を突くような宮舘の言葉に、渡辺は一瞬言葉に詰まる。
💙…だって、Aさんも言ってたじゃん。それに、最近のあいつの態度、明らかにおかしいだろ
❤️ああ、おかしいね。確かにおかしい
宮舘はあっさりと肯定した。しかし、その続きの言葉は、渡辺の予想とは違うものだった。
❤️だけど…それは本当に『康二が変わってしまった』からなのだろうか。…翔太
宮舘は初めて、渡辺の顔をまっすぐに見た。その真紅の瞳は、全てを見透かすように静かだ。
❤️人の言葉を信じることは大切。
でも自分の目で見て、肌で感じてきたものを疑うことも時には必要じゃないかな。
❤️君は、今の向井康二を見て、心の底から『あいつが悪い』と、本当にそう思う?
💙っ……
渡辺は何も言い返せなかった。違う。心の底では、そう思っていない。
元気のない康二を見るたびに胸がザワつくし、聞こえなくなった大きな笑い声を探している自分がいる。
ただ、一度信じてしまった手前、そして何より、素直になれない自分が邪魔をしていた。
宮舘の言葉は、そんな渡辺の心を静かに、だが確かに揺さぶっていた。
自分は本当に、自分の目で真実を見ようとしていただろうか。一番簡単な「誰かの言葉」を鵜呑みにしていただけじゃないのか。
💙…別に、俺は…
言いかけた言葉を飲み込み、渡辺はガシガシと頭を掻いた。
隣に座る幼馴染は、それ以上何も言わなかった。
だがその沈黙は、どんな言葉よりも雄弁に、渡辺の心に問いを投げかけ続けていた。
コメント
1件