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その日の全ての仕事が終わり、ほとんどのメンバーが楽屋を去った後も、岩本照と深澤辰哉は残っていた。
次のライブの構成について、リーダーと最年長として詰めておきたい部分があったからだ。
しかし、パソコンの画面を前にしても、二人の間の空気はどこか重い。
💜…なぁ、照
先に沈黙を破ったのは深澤だった。
💛うん?
💜最近のウチの空気、正直どう思う?
深澤の問いかけは、ライブの構成とは全く関係のないものだった。
岩本はパソコンから顔を上げ、じっと深澤の目を見る。その表情は真剣そのものだった。
💛…良くはないよな。特に、康二が原因で全体の士気が下がってる
岩本は、事実としてそう口にした。
リーダーとして、グループ全体のパフォーマンスを第一に考える彼にとって、集中力を欠いているように見える康二の態度。
それは看過できないものだった。スタッフAから聞かされた「演出への不満」も、その評価に拍車をかけていた。
しかし、深澤は静かに首を横に振った。
💜本当に、康二が原因かな
💛…どういう意味?
💜俺には、あいつが『原因』じゃなくて、何かの『結果』としてああなっちまってるように見えるんだよ。
💛…なあ照、お前、Aさんのことどう思う?
唐突に出たスタッフの名前に、岩本は少し眉をひそめる。
💛仕事はできてるんじゃないの
💜まあ、そうなんだけどさ。
…あいつ、康二にだけ当たりがキツいの。
💜ねぇ照、気づいてる?
深澤の言葉に、岩本はハッとした。
言われてみれば、Aが康二の挨拶を無視していた場面や、康二の言葉だけを遮る場面を、何度か見たことがある 。
その時は気に留めていなかった些細な違和感が、深澤の言葉によって、はっきりとした輪郭を持ち始めた。
💜俺、何度かAさんが康二のいないところで、あいつの悪口みたいなこと言ってるの聞いちまったんだよ。
💜他のメンバーも、それを聞いて康二のこと誤解してんじゃないかなって…
深澤は、まるで罪を告白するように、静かに、しかしはっきりとそう言った。
岩本は黙り込んだ。
脳裏に、先日康二に「何か思うことがあるなら直接言え」と問い詰めた時の、あいつの傷ついたような、何かを諦めたような顔が蘇る。
リーダーとして、グループを守るために、俺は正しい判断をしていたはずだ。
でも、もし。
もし、俺が守るべき仲間を、外部の悪意から守れず逆に追い詰めていたとしたら…?
💛…すまん、ふっか。俺は、気づけなかった
絞り出すような岩本の声に、深澤は「いや」と静かに言った。
💛俺も、もっと早く言うべきだった。ごめんな。…でも、まだ間に合うよな
💜…うん
岩本は、強く拳を握りしめた。その瞳に宿っていたのは、後悔の色だけではない。
Snow Manのリーダーとして、何があってもこの9人を守り抜くという、揺るぎない決意の炎だった。
💛俺たちが、しっかりしないとな
💜おう
短い言葉を交わしただけで、二人の意思は通じ合っていた。
長く、そして誰よりも深くこのグループを愛してきた年長者二人は、静かに立ち上がった。