テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
それから時間まで彼女といろいろ話した。彼女の名は麗華女王様というらしい。麗華女王様と呼んだほうがいいかと尋ねたら、麗華でいいと言われた。M男じゃない客に強要する気はないって言った。
麗華さんはここで出来るプレイを説明してくれた。このプレイルームは縛って吊るすことまで出来るらしい。「縛られたい?」って聞かれたけど、それは丁重にお断りした。縄抜けの術は会得していない。
ほとんどのものは興味はなかったけど、一つだけやってみたいものがあった。両手を拘束されて鞭で打たれるというものだ。ここは梁に鎖が繋がっていて本格的だ。映画で見たやつのようだ。俺はワクワクしながら皮の拘束バンドを手首に嵌めた。
「なにしてんの?」
「こないだ映画で観て。やってみたいなって」
そう答えると麗華さんは呆れたように俺を見た。
「……仕方ないわね、やってあげるわ。まず上脱いで」
「脱ぐのか?」
「服が破れていいのなら」
それは困る。俺は慌ててマウンテンパーカーとワイシャツを脱いだ。
「意外と鍛えてるじゃないの。もっとヒョロガリかと思った」
部屋から出ない仕事だからこのままだと腹が出てくるかもと思って筋トレを始めた。たぶん石川の影響だと思う。石川は俺とは比べ物にならないくらい鍛えている。胸板はかなり厚いし、腹筋だって綺麗に割れている。俺はそこまで綺麗に割れてない。うっすら割れてるのが分かる程度だ。
俺は片手に皮の拘束バンドを嵌めた。そこまですると麗華さんがもう片方の手首を掴んで引いた。これで俺は大の字に拘束されてることになる。
麗華さんは俺の背中側に立ち、鞭の柄で背中をすうっと撫でた。
「いい? 我慢なさいね」そっと耳元で囁かれる。
風を切った音がして俺の背中に鞭が振り下ろされた……振り下ろされたか? 麗華さんは二、三度背中を打った。
「ねえ、麗華さん」俺は頑張って首を回して振り返った。麗華さんは鞭を振るうのを止め、首を傾げた。
「なに? もういいの?」
「そうじゃなくて、今って鞭使ってる?」
麗華さんは手元に視線を落とした。
「使ってるわよ、バラ鞭だけど」そう言って鞭を掲げた。
「なんか違う」
そう言うと麗華さんは綺麗な顔を歪めた。
「私の一本鞭を受けたいって?」一本鞭? ああ、そういえば映画のはそんなかんじだったか。俺は頷いた。
欲しがりねえ、麗華さんはそう言って壁に飾ってある鞭を手に取った。そして手の中でピシリと音を立てた。
「泣いたって止めないわよ。覚悟なさい」
そう言って鞭を振り下ろした。ヒュンと風を切る音がした。さっきとは違う。もっと鋭く切り裂くような音だ。それと同時に背中に痛みが走った。音がしたのかもしれないが、それよりも先に痛みを感じた。麗華さんは容赦なく何度も鞭を振り下ろした。背中は痛みと共に熱を感じた。流石に「ううっ」と声が漏れた。だが止めてくれる気配はなかった。背中がどんどん熱くなる。けれどそれは不快なものではなかった。