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〈第5章〉
そして時は流れて
高校生になって2年目の夏 _ 。
第一志望である難関私立は無事合格し
そこへ入学した .
吹奏楽部の強豪というのがあったから
吹部目的で入ったのもある
深井さんの高校の行き先はわからない
だが、ちょくちょく連絡はとっている 。
音楽室には吹部の演奏の音が響き渡ってる中
ボクは深井さんのことで
頭がいっぱいになっていた
中学の頃は深井さんと同じ吹部で
別パートだったから
部内で話すことなんてなかったけど
教室ではよく話していた
いつのまにかボクは彼女に惹かれていっていた
《守井、リードミスしてたぞ。》
男子生徒に注意を受けて
慌てて口から楽器を離す
「あ 、ごめん 。」
《珍しいな 。
普段お前リードミスなんてあんましねーだろ》
「ちょっと考え事… 」
《なんや、女でもできたんか》
「いやいやいや ‼︎そんなことない‼︎」
否定をし続けても
《なるほどー。女ねー。》
僕に彼女がいる、という認識をされた
「いないから !!笑」
なんてツッコミを入れると
音楽室内には笑い声が溢れた
その中に深井さんの透き通った
笑い声があったような気がした
「あれ … 。」
《ん、どうかした?》
「あ、ううん.なんでもない」
気のせいだよな 。
まさかこの学校にいるとか…
辺りを見渡すと深井さんの姿があった
「えっ 、?!」
深井さん、同じ高校に進学したんだ… 。
《…深井ちゃんのこと好きなん?》
ちゃん付け … ?
やっぱり相変わらずなんだな …
深井さんが男女問わず好まれるの。
『それはどうでしょ 〜う … 。教えないよ』
《あ、深井ちゃんじゃん》
『2人が楽しげに話してたから。割り込みたくなっちゃって』
「深井さん … 。」
『あ、ねえ…守井さん借りていい?』
《おう、いいぞ》
「え … 借り … ?!」
『中庭、いこ』
「あ 、うん」
手を引かれるがまま深井さんについていく
『ん 〜 …夏風が気持ちいいー。』
夏風に吹かれる深井さんは
中学の時と変わらず美しき儚い少女だった
あまりにもずるい 。
キミの中に吸い込まれていくような
そんな感覚ばかりで 。
〝好きだ〟
その3文字を初めてキミに言ったあの日
キミは冷静にそっと流して 。
あまりにもずるい女の子だな… と思った
「ねぇ…深井さん」
『…呼び捨てで呼んでよ 。』
「… え?」
『ほら . せっかくここまで仲良くなったのに』
「あ…うん、じゃあ…深井…ちゃん?」
『ちゃん付けは許した覚えないよ』
「えええ … ?じゃあ…深井 。」
『なあに、逸くん 。』
「え … ちょ 。下の名前で呼ばれるの聞いてませんって!」
『言ってないもん 。』
ほんとにずるいな… 、
ずるくて 、どうしても嫌いになれない
ぼくを好きにさせていく
キミはずる賢い少女だ