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HRが始まる。

後ろに回され皆に届く紙。

いじめがないかのアンケートだとか。

一体これで何度目だろう。

これは意味があるのだろうか。


1) いじめられていますか。(あると答えた人だけこの後の質問1〜3に答えて下さい)

「ない」

私は今辛い気持ちだ。いじめとはどこのラインから入るんだろな。

1 どのような場面で…

2 誰に…

3 どのような内容…

ない。と私は答えた。あれはいじめじゃない。と。下に続くのは、ある。と答えた人への質問。私は考える。どうしてその人だけに同情するかのように文章がつづられているんだろう。私のことなんてどうでもいいみたい。初っ端から私の可能性は雑に切り捨てられた。中途半端なやつの相手なんてしていられないのだろう。私のアンケート用紙は誰よりも静かに座っていた。相手は薄い紙切れなのに、誰もお前のことなんて興味ないからと言い聞かせてくるようだった。

内容に目を通す。

どうやら経験のあるものがちらちら、

…またはいじめでしたか。

いつもされてるものもあれば、一度されてどきりとしたものがある。

でもね。

“私が悪いのでいじめじゃありません。またはあれは友達のからかいなのでいじめじゃありません”


2)あなたの周りで、今、いじめられている人はいますか。(あると答えた人だけ、この後の質問1〜3に答えて下さい)

「いいえ」

だからいじめってなんだよ。動画とか漫画とかで見るやつ?あんなの居ないよ。あれだけ白黒つくほど激しければむしろ清々しいのに…。気持ちのよくない落書きをされた上履きを履き続ける、へらへらと笑う不清潔な男子がとなりの席に座っている。…分からない。一体どこからがいじめなんだ?分からない。私だって分からないよ。私はいじめられてなんかいない。あの人達はみんな、”こんな私”に付き合ってくれる”本当に優しい友達”だ。でも、どうしてこんなにも毎日死にたいの。どうしてあの人達は何も悪くないだなんて心の中で何度も往復しているの。どうして私は私がこんなにも嫌いなの。殺してしまいたいの。

繰り返されるのは日常になった自己嫌悪。周りが学生生活を青春だなんて名前をつけて謳歌していること、将来に希望を持つことを本気で馬鹿にしていた。先生は生徒にもてはやされてぷかぷかと気持ちよくなっているんだろう。私のような上っ面の笑顔を鵜呑みにする馬鹿。その先にあるものを見ようとも気づこうともしない。同情なんてどこにもない。永久に1人ぼっち…

3)今までの質問で書けなかったことや、いじめのない学校をつくるにはどうしたらよいかについて考えてください。(全員回答)

「1人1人が行動や言動にうつさないように意識することだと思います。」

こんなことを書くことでいじめの問題が解決するとでも。悪口を改めるとでも。…違うんだな、これは時間稼ぎの問題だ。書き終わる速さにあからさまな差を生ませてはいけないからだ。

「書き終わったら用紙を下に向けて置いて下さい。」

この担任はこういう時間に限って真剣な表情を作るんだよね。少しでも生徒が風紀を乱す行為をしたならば激しく喝を入れ、優しい先生を信じてたその子の内心はずったずた。皆は自業自得だとその子を責めるか、先生を怖がるか、または興味なんてないか。

出席番号順に用紙が一枚ずつ回収されていく。

“神代楓果”

名前は書かないと聞いたが、そうやって回収するんじゃばれるじゃないか。個人懇談とかで聞かれるのだろうか。まあ、何も書くことはないけれど。

私は私のことが嫌い過ぎていつもこんな自分を殺してしまいたいと考えている。それではいけない…。だから沼から出ようともがく。しかしそれは底なし沼だったようで、真面目にもがくほどに私は息ができなくなっていた。どうやら、これにはコツがあるらしいが誰も教えてくれなかった。今の私の持つ言葉だけでは、私の本当の気持ちなんて伝わらない。むしろ誤解され、呆れられる。その言葉は私の命の一部なのに。だから私は隠す。もう、誰も私を知らなくていい。逃げ道なんてどこにもないんだろ。

今の私は中学生。誰かに出会える日を待っていた。

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