親友夫妻の自宅に遊びに行ってから一週間後、純は、愛車に恵菜を乗せて湘南の海へ来ていた。
二〇二五年のカレンダーは、この日から二月。
早いもので、恵菜と出会ってから、一ヶ月以上が過ぎた。
微かに開いた車窓から入り込む潮風を感じながら、純はステアリングを握り、海沿いの国道を走行している。
助手席には恵菜が座り、ホットのミルクティを飲みながら、窓に映る水平線を眺めていた。
カーステレオから軽快なJ-POPが流れ、上機嫌で車を運転する純。
土曜日で交通量も多いが、隣に恵菜がいると思うと、舞い上がってしまいそうになる。
「すごく綺麗……!」
突き抜けるような青空と、どこまでも続く水平線、陽光に反射してキラキラと輝く海に、恵菜は顔を綻ばせている。
「いい天気で良かったな」
「はいっ」
恵菜から満開に咲き誇った笑顔を向けられ、純は、彼女を海に連れてきて良かった、と心底思う。
稲村ヶ崎の近くに駐車場を見つけ、純の愛車を止めた。
純がスマートウォッチで時間を確認すると、十一時を少し回っている。
「恵菜さん、腹減ってない?」
「ちょっと空いちゃいました」
「じゃあ、先に昼メシにするか」
車から降りた二人は、駐車場近くにあるアジアンテイストのカフェを見つける。
オープン時刻を迎えたばかりなのか、客は少ない。
「開店したばかりだし、ここにする?」
「はい。店の前にあったメニューを見ても、すごく美味しそうだし、ここがいいです」
「オッケー。さっそく入ろうか」
純は店のドアを開けて、恵菜を先に店内へ行かせた。
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