テラーノベル
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瀬名 紫陽花
s i d e__蒼 太
空が蜜柑色に染まりかけた午後16時15分。
また生徒指導の中原に呼び出しをくらった。
「 あーだる。俺が何したってんだよ 」
舌打ちをひとつすると同時に
甘く、苦い匂いがほんのり鼻をかすめた。
「 あ。」
生徒昇降口の奥に吹奏楽部長の姿が見えた。
「 あっ…。」
焦ったように右手を隠し、左手に持っている楽器で自分の顔を隠す部長。
それが少しだけ可愛いと思ったのは俺の勘違いか。
「 右手のソレ、なに? 」
「 …マウスピース。」
目を逸らして、曖昧に首を振る部長サン。
「 煙草だろ?
俺、匂いで分かるんだよ。 」
「 …さすが生徒指導常連サンね。」
手に持っている**ユーフォニアム**を抱え直してこっちへ歩いてくる部長。
成績優秀、カンペキだと思ったんだが…
「 煙草は44番がオススメよ 」
どうやら、違ったようだ。
「 いや110番だろ。」
「 …通報しろってこと? 」
「 バカ、ちげーよ。」
太陽で銀色に光るソノ眼鏡も
ぎゅっと縛ったソノお団子頭も
真面目そうな制服の着こなしも
全部ウソだったらしい。
「 昇降口で煙草とかお前馬鹿なの? 」
「 バレないかと。」
「 今誰にバレてる。」
ふふーんと目を逸らして誤魔化す仕草が何故か懐かしく感じた。
窓から差し込む橙色の光が
ユーフォニアムのベルの縁をなぞり、 柔らかな輝きを帯びている。
「 … 日焼けするぞ。」
「 それ木管じゃない?笑 」
クスッと笑う彼女の顔は太陽に照らされてオレンジ色で、 すごく綺麗に見えた。
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