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気づけば、あの“きのこだらけの冷蔵庫”の日から、ずいぶん時間が経っていた。
同居にもすっかり慣れて、生活のリズムも自然と重なっていく。
若井が落ち込んで何も手につかない日もあった。
ソファに沈んで、ぼーっと天井を見てるだけの時間。
そんなとき、涼ちゃんは何も言わず隣に座る。
「…無理して喋らなくていいよ」
ただそれだけ。
でも、その一言と距離感がちょうどよくて、若井は少しずつ息がしやすくなる。
気づけば、ぽつりぽつりと話してしまっている自分がいる。
「…ありがと」
小さく言うと、涼ちゃんは少しだけ笑う。
「どういたしまして」
調子がいい日には、ふたりでダンスの練習もした。
「ここ、もっとこう…揃えたい」
「いや今ズレたの俺じゃないだろ」
「いや絶対若井だって」
くだらない言い合いをしながら、何度も同じ振りを繰り返す。
息が上がって、笑って、またやり直して。
その時間が、妙に楽しかった。
たまに元貴も一緒に、3人で出かけたりもした。
「お前ら買いすぎ」
「元貴が一番持ってるけどな」
「いやこれは必要なやつだから」
どうでもいいことで笑い合って、気づけば時間なんてあっという間に過ぎていく。
そして——
「…もう終わりか、休止期間」
誰かがぽつりと呟いた。
あんなに長く感じていたはずなのに、振り返れば一瞬みたいだった。
若井はふたりの顔を見る。
変わったようで、でも何も変わっていない。
「…戻るか」
その一言に、涼ちゃんは頷く。
「うん」
元貴も軽く笑って、
「行こうぜ」
と背中を押した。
不安がないわけじゃない。
でも、それ以上に——
また3人で音を鳴らせることが、楽しみだった。