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くるみ_226
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第9話 「おかえり」の食卓
仁人が熱を出してから数日。
体調はすっかり回復し、久しぶりに早く仕事を終えて帰宅した。
「ただいま。」
玄関を開けると、キッチンから勇斗が顔を出す。
「おかえり。」
「……何してるの?」
「今日は仁人がまだ本調子じゃないと思って、カレー作ろうかなって。」
勇斗は少し照れくさそうに笑った。
その後ろには、切り方がばらばらの野菜が並んでいる。
仁人はその様子を見て、小さく笑った。
「勇斗。」
「うん?」
「その玉ねぎ、ちょっと大きい。」
「やっぱり?」
「貸して。」
仁人はエプロンを着けると、勇斗の隣に立った。
包丁を握る手は慣れたもの。
野菜を均等な大きさに切り分け、鍋の火加減を調整する。
勇斗はその手際のよさに見とれていた。
「……やっぱりすごいな。」
「何が?」
「料理してる仁人。」
「そんな見るな。」
「見ちゃう。」
「恥ずかしい。」
「かっこいいから。」
「……。」
仁人は照れ隠しに鍋をかき混ぜた。
◇◇◇
ピンポーン。
「こんな時間に誰?」
勇斗が玄関を開けると、
「はやちゃーん!」
元気な声と一緒に舜太が飛び込んできた。
「遊び来たでー!」
「こんばんは。」
その後ろから柔太朗が袋を持って頭を下げる。
「差し入れ買ってきたよ。」
「ありがとう。」
さらに最後には太智が笑いながら手を振る。
「仁人ー!」
「……何でおるん。」
「駅で偶然会うてん。」
舜太が笑う。
「ほんなら『みんなで行こや!』ってなってん!」
「完全に舜太が言い出したよね。」
柔太朗が苦笑する。
「ばれた?」
舜太は悪びれもなく笑った。
◇◇◇
「うわっ!」
キッチンを覗いた舜太が声を上げる。
「めっちゃええ匂いや!」
「仁人が作ってるんだよ。」
勇斗が答えると、舜太は目を輝かせた。
「やったー!」
「この前食べてから、また食べたかってん!」
柔太朗も鍋を見て微笑む。
「仁人くん、本当に料理上手だね。」
「……普通。」
「普通じゃないよ。」
勇斗が笑う。
「仁人の料理、俺一番好きだから。」
「……。」
「耳赤い。」
「勇斗。」
「何?」
「黙って。」
「はい。」
みんなが笑い出した。
◇◇◇
しばらくして料理が完成した。
カレーだけではなく、
サラダ。
だし巻き玉子。
ポテトサラダまで並んでいる。
「すご……。」
柔太朗が感心したように息をつく。
「これ全部作ったの?」
「うん。」
「料理屋さん開けるよ。」
「せやせや!」
舜太も大きくうなずく。
「ほんまに店出せるって!」
「高校ん時からうまかってん。」
太智はどこか誇らしげだった。
「はやちゃん、毎日こんなん食べとるん?」
「うん。」
「ええなぁ。」
「うらやましいわ!」
舜太が笑う。
勇斗は照れたように頭をかきながら答えた。
「毎日幸せだよ。」
その言葉に、仁人は思わず視線をそらす。
「……。」
まただ。
こういうことを、何の迷いもなく言う。
「仁人くん。」
柔太朗が優しく笑う。
「はやちゃんが毎日自慢する理由、よく分かったよ。」
「え?」
「『仁人の料理は世界一』って、会うたびに言ってるから。」
「柔太朗!」
勇斗が少し恥ずかしそうな顔をする。
「えー! はやちゃん、そんなこと言うとったん!?」
舜太は大笑いした。
「惚気すぎやろ!」
「ほんまやで!」
太智まで笑い始める。
仁人は真っ赤になりながら勇斗を見た。
「……勇斗。」
「ごめん。」
「あとで話ある。」
「怒ってる?」
「少し。」
「でも許してくれる?」
「……ご飯食べ終わってから。」
その返事に、勇斗はほっと笑う。
その笑顔につられて、仁人も少しだけ笑ってしまった。
料理の湯気と、みんなの笑い声。
温かい食卓は、今日も幸せな時間をゆっくりと刻んでいく。
コメント
1件
うわあああ第9話も尊すぎて悶えた!!😭💕💕 勇斗が「仁人の料理、俺一番好きだから」って何の迷いもなく言えるのズルすぎるでしょ…!仁人の耳赤くなるところも可愛すぎて画面見ながらにやけた♡ 舜太たちが突然来ても温かい食卓になるのがこの作品の最高の魅力だよね〜! 柔太朗が惚気暴露して仁人が真っ赤になる流れ、完璧すぎて笑った🤣 もう毎日この家族の食卓を覗き見していたい…!次の話も楽しみすぎる!!🌸