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太陽が屋上に向かって輝いている。
その下で、少女は怒った口調で喋り出す。
｢私の日記帳、読みましたよね？｣
｢読みましたけど。何か？｣
読むべきじゃなかったのか。
そりゃそうだよな。
誰でも日記読まれたら嫌なもんだよな…
｢有り得ない…人の日記を勝手に読むなんて…｣
やっぱり。
初対面なのに嫌われたな。
いやけど、興味をそそられたんだ。
興味をそそるような題名を書いていたんだ。
僕は…悪くない…だろ…？
｢いや、死ぬって書いてあったら気になるじゃないですか。｣
｢それでもですよ！本当に有り得ない…最低すぎます…｣
｢はぁ！？いや！気になったから読んだんです！｣
｢言い訳ですか！言い訳は受け付けませんよ！｣
そんな変な話を続けて、数分。
太陽がさっきよりも少しズレている。
少し陰になってきた。
女の子と話したのは久しぶりだ。
昔、仲良かった女の子が居た。
けど、いつの間にか話さなくなっていた。
それも、事件があったからなんだけど…
その事件が思い出せない。
その日以来、他の女の子とも話さなくなった。
そんなことを考えて、お互い目を合わせる。
お互いに見合って、明るく笑い出す。
｢時雨さんって面白いんですね、笑いすぎてお腹が痛いですよ｣
笑顔で話して、少女の笑顔は明星のように明るかった。
太陽や月と同じようで一緒に、輝いていた。
｢やりたいことリスト、叶えてくれるんですよね？｣
｢そうだけど。｣
｢じゃあ！まず最初！授業をサボってデートに行くこと！｣
｢授業をサボって！？それは──！｣
｢拒否はなしです！行きましょー！｣
少女は僕の手を持ち、引っ張り出した。
少女に手を繋がれ、驚いた衝動で少女の手を見ると、少女の手には傷があった。
切り傷…のような傷だ。
｢なに、この手。どうしたの？｣
思わず聞いてしまった。
｢あぁ、えぇ？そんなこと気になんの？
ただの傷だよ〜。カッターで切っちゃったの｣
そんな訳ない。
この傷は包丁で切られた跡だ。
｢違う。包丁で切られた跡。｣
｢ほぇ？…なんでわかったの？笑｣
なぜか急に思い出すように頭に出てきた。
でもそのこと以外は何も…。
｢わからない、けど急に…｣
｢この傷ね、初めて料理した時にできた傷なんだよ。自分の手をクリームパンだと思っちゃったみたいでさ〜。笑っちゃうよね｣
｢そう、なんだ。｣
笑いながら答える少女。
おそらく、料理した時にできた傷というのは本当だろう。
僕は何も知らないんだから。
｢ねぇ、早く行こ？｣
さっきよりも強く手を引っ張られ、
急ぎ足で向かっていたのがわかった。
そのことに、僕は何も言わなかった。
たどり着いたのはカフェ。
ちょっとしたカフェだった。
コーヒーや紅茶が売っているだけ。
スイーツは何も売っていない。
店も一軒家と比べたら
とても小さかった。
｢このカフェ、いいでしょ？
私のお気に入りのカフェなんだよ〜？｣
｢へぇ。｣
｢ねね！この紅茶頼もうよ！
新しくできた紅茶みたいだよ！？｣
｢ん、いいけど。｣
本当に明るい少女。
そういえば、まだ名前を聞いてなかった。
｢ねぇ、君の名前。聞いてないんだけど｣
｢そうだろうね。教えるつもりないもん｣
なぜ、？
なぜ教えるつもりがないんだ？
普通は教えるものじゃないのか？
話が途切れるように店員が紅茶を持ってきた。
｢お待たせしました〜｣と一言。
少女は紅茶を1口、口に運び喋りだした。
｢私の日記帳読んだならわかるでしょ？
私、膵臓がんなの。すぐ死んじゃうからさ、
名前は教えないの。
私の名前知ってるのもクラスの数人くらいだよ｣
｢なんですぐ死ぬからって教えないの？｣
｢だってさ、記憶に残ってたら
私が死んだ時に悲しい出来事が
上書きされちゃうでしょ？
名前教えなかったら変に記憶も残らないし。｣
少女は少し泣きそうだった。
作り笑顔の裏は泣いているだろう。
本当は友達も作りたいだろうし、
名前も覚えてほしいだろうに。
｢僕には上書きされないよ。
やりたいことリストを叶えるだけの関係だから。 ｣
｢なにそれ。
けど、名前は教えな〜い！
覚えてほしくなったら教えるかも？
まぁないと思うけど〜！笑｣
｢覚えてほしくなったらって何だよ？
まぁ名前は知らなくてもいいけどね。｣
君の名前を知るには
もう少し先になりそうだ。
｢はい！次の場所行きますよ〜！｣
｢え、次！？今授業中なんだからな！？｣
｢私には知らな〜い！
は〜い！次の場所〜！｣
コメント
1件
ヾ(ﾟ∀ﾟ)ﾉ ﾊｲﾊｲ!考察、いっきまーす！！ 昔あった事件とやらの女の子が、病気の子なのでは！？ 時雨は「知らない」って言ってるけど、手の傷のこととか多分知ってるんじゃ…？ 事件とやらのショックで両方ともお互いのことを忘れてて、死ぬ前に思い出して、「今度こそ忘れずに互いを覚えて欲しい」ってことで名前教えて貰えたらなったらそれはもうドキがムネムネしちゃう展開ですわね！！好き！！続き待機！！
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