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「うわーっ、凄いっすねー」
私はチョロフさんの大鷲に乗せてもらって空の旅をしてるっす。
「気持ちいいでしょ? エルフみたいに風の加護がないとしんどいかも知れないけど、私に掴まっていれば平気だからね」
なるほど、確かにまともに考えればこの風のなかで平気な訳がないっす。また一つ魔術に魅せられたっすねえ。
ひとしきり飛んだ後はそのまま街の中に向かって、一軒の鍛冶屋の前に降り立ったっす。でもいいんすかね? こんなダイレクトインしちゃって。
「ダーリルっ! 元気してる?」
カランカランと鳴るドアを開けて中についていくっす。
チョロフの行きつけの店らしく、まっしぐらに店員にちょっかいを出しに行ってるっす。
「あ」
訪れた馴染みのお客さんを迎え入れるために立ち上がったかと思った店員が、スパっとチョロフを半回転させて首をキメた。
「お前はまたピヨピヨでそのまま乗り入れたな。知らない人にはピヨピヨは脅威に映るからやめろと、何回言えば……っ」
「ギブっ、ギブ! 締まってきてる! 締まってきてるよぉーっ!」
「おーい、チョロフさーん。起きるっすー」
チョロフさんが意識を失った途端に巨鳥は召喚を解除されて消えたっす。
「うーん……。はっ! ここは……っ?」
「ここは鍛冶屋っすよチョロフさん」
「うん? 私はフィナよ。すんごいエルフのフィナ」
しまった、チョロフ呼びを自然に口にしていたっす。
「すんごいチョロフのフィナ。ここは俺の店の控え室だ。お前が客を連れてきてくれたんだろう」
「ちょっチョロフ⁉︎ なにそれチョロ……あっ⁉︎ チョロくなんてないわよっダリルひどくない⁉︎ エルフよっ、私はエルフなのよぉー!」
そう叫んでチョロフさんは座ってるダリルさんの太ももにしがみついて悲嘆にくれる仕草をとる。仕方なくダリルさんが頭を撫でてやるとすぐに落ち着き、さらにナデナデのおかわりを要求するように手首を掴んで離さない。やっぱりチョロフっすね。
「あら? またよく分からない状況ですね。とりあえずお茶を淹れましたのでどうぞ」
黒髪にこの辺りでは見ない服装の美少女。なにここ、私も含めて美少女だらけじゃないっすか。
「ありがとう、サツキ」
ふーん、サツキちゃんて言うんすねー。この子は別に普通のヒト種っすね。うん、普通っすね。
「ミーナからお前のことは聞いている。外から来たんだってな?」
やっぱりここでもミーナちゃん。一体どういう繋がりなんすかね。
「はい。私はエイミアって言うっす。ここから東の街道を歩いて来たっす」
「馬にも乗らずに、か?」
心なしか眼光が鋭くなったっす。
「ここに来るなら馬では無理っすからね」
「途中で農夫には会ったか?」
美少女が淹れたお茶を口にしたダリルさんは少し柔らかくなった。
「ええ、挨拶して通してくれたっすよ」
それだけで伝わったっす。ダリルさんは、そうかと呟き私を見るっす。
「何故、知っていた?」
核心。誰もここまで聞いてはこなかった事っす。
「私の一族に伝わる言い伝えっす。ここに街があることも、知ってる人でないとたどり着くことが難しいことも、その理由も農夫のおじさんも──」
「分かった。それだけ聞ければ充分だ。それでこの街で何をしたくて来たんだ?」
「それは……魔術を見たくて」
「魔術ならよその国のほうがありふれていていくらでも見れるだろう?」
そう、その通りっす。魔術が見たいって言うのはここに至るまでの目的地探しの行いっす。そして目の前にいるこの人がそうっすね。
「私は魔術士になりたいっす!」