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秋晴れ広がる早朝。私は学生鞄を手にぶら下げずに胸元でギュッと握り締め、淡い空をただ眺めていた。 胸がザワザワとするのは、これからの気鬱なのか、緊張なのか、早く登校時間になって欲しいからなのか。それが分からない私は、余計に胸の高鳴りを抑えることが出来ないでいる。
「あ、おはよう」
ドキンと鳴った音に対して気付かないフリをして、努めていつものように声をかける。すると。
「ん!」
その返事の代わりとばかりに、いつも通り私に鞄を差し出してきた。
「うん」
それを受け取り、いつもの道を歩き出す。そう学校に。
今日は文化祭当日。朝からやらないといけないことが、いっぱいある。
だから、私は休まない。良い子で居たいからではない。それは。
気付けば私は隣を歩いてくれる長谷川くんを、チラッと見ていた。
「あ?」
「ううん。なんでも」
何も言わず、ただ共に歩く。このなんでもない時間が、やたら心地良かった。
学校に着いた私達は、家庭科室から四階の教室に食材を運ぶ。それも買い出し係の仕事の為、その作業を二人でしないといけなかった。
するとそこに居たのは、南ちゃんと絵美ちゃん。一瞬、手伝おうとしてくれていると思ったけど、その心は冷蔵庫に食材があるかを確認しに来ただけだと分かる。
私に話しかけることなくスッと横切るその思考は、友達だったことが信じられないぐらいの罵詈雑言だった。
「時間ないんだからよ。あんな奴らなんて、どうでも良いだろ?」
「……うん」
冷蔵庫から食材を出しながら、キリキリとし出した胃に治ってと願う。
「……お前のこと大事に思わない奴ら。友達でもなんでもないだろ?」
「え?」
その言葉に私は雷に打たれたような衝撃を受け、ただ呆然と長谷川くんを見つめてしまった。
「ほら、飲めよ。今日は長いんだから」
そう言い、鞄から胃薬を取り出そうとしてくれるけど。
「ありがとう。大丈夫」
私は、それを止めた。
「……そうか」
「うん」
ダンボールを持って階段を登って行く。
すると階段窓より差す、キラキラとした秋の日差し。それはまるで、私の心のようで。
あの言葉は、まるで私から憑き物を取ってくれたようだった。そうだね。自分を大事にしてくれない人にどうしてそこまで縋っていたのだろう?
淋しいから? 一人になりたくないから?
でも、それって、結局一人だよね? 一緒に居ても、心は側にないのだから。
だから、もうやめよう。上部だけの友人関係も、親子関係も。
すごいな。そう思ったら肩の力は抜け、胃の痛みもスッと引いていった。薬がなくても。
気持ちの持ちよう一つで、そこまで変われるなんて。
言葉は人を傷付ける刃だと思ってきたけど、それだけじゃない。この呪縛から解いてくれ、優しく包んでくれる。
そう教えてくれたのは。
長谷川くんはまた食材を取りに行ってくれ、私は刻み始める。店を手伝えない分、出来ることはやっておこうと決めていた。すると。
「手伝うよ」
クラスメイトの女子。|藍田《あいだ》さんと、|高松《たかまつ》さんが来てくれた。
「……え」
「全部押し付けてごめん」
「だから、手伝わせて……」
そう言いながら、トントンと刻み始めてくれる。家庭科室から、包丁とまな板まで持ってきてくれたみたい。
二人の心を読むと、南ちゃんと絵美ちゃんが怖かったみたい。だから、何も言えなかったって聞こえた。
その瞬間、また鼻がツンとする感覚がする。
だめだ。また泣きそう。私はいつから、こんな泣き虫になったのだろう。
こうしている間にみんな集まってきて、仕込みは無事に終わった。
「じゃあ、お願いしていい?」
「うん。任せて」
店番を頼み、私は二年生の代表としての役割をしてくる。
当番は一時間毎と決まっていて、みんなやると言ってくれている。
だから、大丈夫だよね。きっと上手くいくよね。
そう信じていたのに。
かかお