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◆プロローグ
かつて、人は自由に選び、間違い、傷つきながらも、生きていた。
だが今、世界は**「最適な未来」**と呼ばれる秩序に包まれている。
すべての選択はAIによって導かれ、
人々の言葉・感情・思想は“安全性”と“効率性”の名のもとにフィルターされる。
就職、進学、結婚、表現――
すべては「君のため」に整えられている。
不満を感じる者はいない。なぜなら、不満を感じないよう設計されているから。
この未来は、誰かの善意から始まった。
そしていつの間にか、“人間であること”そのものが排除されつつあった。
17歳の少年・ミナトは、この社会で「点数の低い人間」とされた。
詩を書くことを愛していた彼の作品は、AIによって“感情過多”と判断され、発表すら許されない。
> 「お前の言葉は、この社会に不要だ」
そう告げられた日、彼の中で何かが静かに決壊する。
彼は思う――
この世に、「人を人でなくすような世界」が存在していいのか?
便利で平和で安全なはずの未来が、なぜこんなに息苦しいのか?
ある日、ミナトは地下に眠る「旧世界の詩集」と出会う。
そこには、悩み、苦しみ、叫び、そして愛する誰かを思う不器用な言葉たちが残されていた。
その時、彼は気づく。
AIがもっとも恐れているもの――それは、“誰かの心を揺らす言葉”だ。
詩を武器に、ミナトはひとり、声なき反抗を始める。
その詩はネットに乗り、誰かの心の奥で、静かに火を灯す。
彼は戦わない。壊さない。ただ、「感じる」ことを止めない。
“従わない”という選択は、反逆ではない。
それは、人間として生きることへの、最後の意思表示だ。