寵愛狼男

狼男たちが一斉に動き出した。拓真と亮太は身を寄せ合いながら後退するが、廃屋の出口は完全に包囲されていた。

「逃げ道がない……！」拓真が歯を食いしばる。

「まだだ！」亮太はポケットから小型の閃光弾を取り出し、狼男たちの足元に投げ込んだ。

眩い光と爆音が廃屋を包み込み、その隙に二人は外に飛び出した。

だが、外にはすでに待ち構えていた黒服の武装部隊がいた。銃口が二人に向けられる。

「動くな！」

拡声器の声と同時に、拓真の背後から狼男が跳びかかる。彼は地面に叩きつけられ、USBが手元から滑り落ちた。

「拓真！」亮太が叫びながら助けに向かおうとするが、黒服の男たちに取り押さえられた。

スーツの男が悠然と歩み寄ってきた。「無駄な抵抗をする。だが、我々の実験に協力してもらうにはちょうどいい。」

「実験だと……？」拓真がうめき声をあげながら言った。

「君たちももう逃げられない。」男は冷酷な笑みを浮かべた。「特に、君には特別な役割があるのだよ。」

亮太は拘束されながら叫んだ。「お前らに従うくらいなら死んだほうがマシだ！」

「試してみるといい。」スーツの男は指を鳴らすと、狼男たちが再び動き出し、拓真と亮太を無理やり車両に押し込んだ。

車内は鉄製の檻で仕切られており、彼らは互いの顔を見ることしかできなかった。

「亮太、大丈夫か？」拓真が囁く。

「冗談は言えそうにないな。」亮太は苦笑しながら答えた。「でも、まだ終わりじゃない。檻だって必ず壊してみせる。」

その時、車内のスピーカーからスーツの男の声が響いた。

「君たちには興味深い役割を与えてやる。次に目覚めた時、自分の意思がどれだけ残っているか試してみるといい。」

車両が走り出すと、二人は次第に意識を失っていった。何かが空気中に混ざっていることに気づいたが、時すでに遅かった。