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サッピーの小説室
41
ラコン
2
20XX年9月20日。
私、タイミという存在が…皆の記憶から消えた日。
いきなり訳の分からないことを言われても困惑しますよね。
それじゃあ、事の経緯を話しますね。
私はタイミ。
聖海町という、宝石や欠片が盛んな町で過ごしています。
ですがある時…
私が今まで戦ってきた過去の強敵たちや、別の次元の強敵たちが、私の世界に押し寄せて来ました。
そこに駆けつけたのが、別の次元から来た二人のタイミ。
私はその二人のタイミと共に、私の世界に押し寄せて来た強敵たちと戦いました。
ですがあと少しで事態が収まるというところで…
突然、時空に亀裂が入りました。
裂け目の奥には、数え切れないほどの強敵たちが見えました。
このままでは私の世界は崩壊してしまう。
そこで私は、決断を下しました。
世界中の人々から私の存在を記憶から消す代わりに、世界を平和にするという決断を。
それは順調に進んで、無事に成功しました。
二人のタイミも、強敵たちも帰って行きました。
文字通り、今、私の世界は平和です。
具体的にまとめるとこんな感じになります。
なかなか信じられないですよね。
でも私が今話したことは、全て本当に起きたことです。
え?今私はどうしてるのかって?
ふふ、大丈夫です。
いつも通りに過ごしてます。
それでは私はそろそろお仕事なので、また後程お会いしましょう。
私のことは、ページを進める度にゆっくり分かっていけると思います。
それではまた後程。
世界が私を忘れても。
誰一人覚えていなくても、私はこの町の住人。
それも、ちょっと変わった住人。
ここは聖海町。
宝石や欠片が盛んな町。
町全体が穏やかで温かい空気に包まれ、人々が笑って平和な日々を過ごしている。
だがこの町は、他の町とはちょっと違うところがあった。
この町では、毎日必ず決まって犯罪が起きることだ。
もちろん警察も出動するが、時々、警察ですら解決が難しい事件が起きることだってある。
今日もいつも通り、犯罪が起きている。
どうやら今日は強盗が乗ったトラックが暴走しているらしい。
トラックの後ろには、既に何十台ものパトカーが走って来ていた。
「ギャハハ~!道を開けろ!」
「死にたくなかったらそこを退きやがれ!」
「兄貴ィ!これで俺たちも大金持ちっスねェ!」
トラックは止まることを知らず、どんどんと速度を上げていた。
そこに、黒い影が現れた。
黒い影は体の中に宿る何かを目覚めさせたかと思えば、姿が変わり始めた。
爪が、牙が、背びれが、尻尾が生え、髪と瞳が水色に染まっていく。
そして黒い影は一瞬でトラックの目の前に現れると、片手だけでトラックを止めた。
「おわああああああああ!?」
「な、何だぁ!?」
運転席で強盗達が驚く中、黒い影は瞬く間に強盗達を捕らえ、ワイヤーで拘束して街灯に吊り下げ、宙吊りにした。
「な、何だこれ!?は、離しやがれ!!」
「クソ、解けねぇ…!!」
「兄貴ィ!!何とかして下さいよォ!!」
黒い影が周囲の安全を確認しているその時、ようやく警察がやって来た。
「動くな!手を挙げろ!」
警察は拳銃を向けたまま強盗達にゆっくりと近づいていく。
強盗達は悔しそうに両手を挙げることしかできなかった。
警察が強盗達の連行の準備をしている一方で、パトカーから一人の男が降りて来た。
見た目で分かる、如何にもハードボイルドを愛しているかのような刑事の男だった。
高級とも安物とも言えないコートを羽織り、黒いソフト帽を被っている。
絶妙な渋さすら感じる、それでいてどこか魅力的な剃り方が特徴的な髭が目立つ。
男の名は、エドワード・ステイサム。
彼はニューヨークからやって来たベテラン刑事で、現在は日本に滞在中だ。
ハードボイルドをこよなく愛するこの男は、ニューヨークでは「Mr.ステイサム」、日本では「ステイサム刑事」と呼ばれている。
だがそんなステイサムを唯一違う呼び方で呼ぶ存在…先程の黒い影が、今まさにパトカーのボンネットの上にいた。
黒い影の正体は、黒いトレンチコートをしっかり着込んだ銀髪の女性だった。
右目には眼帯を付けており、至る所には傷跡や火傷の痕が残っている。
宝石のように輝くオレンジ色の瞳には、優しさと強さが混ざった炎が宿っていた。
右腕が黒と白と水色を基調とした近未来チックな義手である女性は、パトカーのボンネットからゆっくりと降りて来た。
女性の名は、タイミ。
本当の名前は、天野大美(あまのたいみ)。
だがどちらにせよ、人々にとってこれらの名前は記憶にない。
なぜならタイミは、世界中の人々の記憶から存在を忘れ去られているからだ。
聖海町の人々はタイミのことを一切知らないが、タイミのことをこう呼ぶ。
「シルバーウェーブ」と。
ステイサムはタイミが降りて来たのを確認すると、穏やかな笑みを浮かべた。
「ご協力ありがとう、シルバーウェーブ。君の活躍に影響されてるのか、我々のところにたくさん新人が集まってくるんだ。」
「大したことではありません。私はただ、この町に平和でいてほしいだけです。」
タイミはいつも通り落ち着いた振る舞いを取りつつも、その顔はどこか嬉しそうだった。
聖海町の人々やステイサムにとって、タイミの行いはヒーロー同然だった。
だがタイミにとって、自分の行いはただ成し遂げて当然に過ぎなかった。
「平和か…同じく私も、この町に平和でいてほしいと思っているよ。もちろんニューヨークもね。」
「…そうですね。」
タイミは右腕の義手の調整をしながら空を見上げていた。
「それにしてもエド刑事。いつも思っていましたが、日本語がお上手ですね。」
「この町での活動に向けて、実は日本語の勉強をしていたんだ。特に私が好きな日本語は…スシのネタだよ。」
寿司と口にしたステイサムは、どこか楽しそうに笑っていた。
ステイサムは寿司が大好きであり、いつかニューヨークにも寿司のブームが来てほしいと心の中で願っているらしい。
「それでは私はこれで。またお会いしましょう。」
「ああ、また会おう。それと、今度一緒に寿司でもどうだい?もちろん私の奢りだ。」
「良いですね。ぜひご一緒させて下さい。」
タイミは優しく微笑むと、跳躍して飛び去って行った。
♡50で続く→
コメント
1件
タイナさん、第1話拝読しました。「世界から記憶を消されてなお、静かに町を守るヒーロー」という設定がとても印象的です。今の日常と、過去に何があったのかのギャップが気になります。ステイサム刑事との軽妙な掛け合いも良くて、シルバーウェーブの正体をもっと知りたくなりました。続きが楽しみです!