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13話 魔法市場
市場は
せまい通路が
入り組んでいる
紙
瓶
札
見たことのない道具が
積まれている
ふっくらは歩く
丸い体
短い脚
揺れる腹
人混みでは
半分くらい
埋もれてしまう
目だけが
きょろきょろ動いている
後ろには
琶がゆっくりついてくる
大きな体
重なった鱗
長い首
畳まれた翼は
動かず
歩くだけで
人の流れが
なめらかに割れる
ふっくらは屋台をのぞく
石の置物
色の変わる瓶
謎の札
興味はあるけれど
仕組みはわからない
ふと
ひとつの箱が目に入る
地味な外見
装飾はほぼない
なのに
目がそらせない
ふっくらが
そっとのぞいた瞬間
胸が
ぎゅっとなる
理由は
わからない
箱の中にある“何か”が
こちらを見ているような
そんな感じがする
ふっくらは
一歩後ずさり
次の瞬間
走った
本気だ
丸い体が
想像以上の速度で転がるように進む
人の間を抜け
屋台のすみをすり抜ける
「むりむりむりむり」
声は小さいが
気持ちははっきりしている
琶は振り返り
箱を見る
長いまつげの奥で
目がすこし細くなる
それだけで
十分らしい
琶は
歩幅をひとつ伸ばし
ふっくらをゆっくり追う
市場の外れで
ふっくらは止まる
息が少し上がり
腹が上下する
目はまだ驚いたまま
琶が追いつく
大きな影が
ふっくらにかかる
ふっくらは
ぜいぜい言いながら
「……あれは
やばかった」
とだけ言う
琶はうなずきもせず
ただ横に立つ
市場は
何事もなかったように
ざわざわと続いている
二匹は
戻らない