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14話 封印の立ち会い
昼
ふっくらは丸い体を揺らしながら
荒野の中心にぽつんと立っていた
短い脚は砂にめりこみ
腹がふよんと前に出て
やる気のなさだけは風格があった
ふっくら
「……ここだよね?
封印の立ち会い……?」
琶が後ろで静かにうなずく
大きな体
長い首
重なった鱗
畳まれた翼が風にあおられ
影がふっくらを包む
琶
「立って待てばいい」
ふっくら
「えっ……それだけ?」
琶
「それだけだ」
ふっくら
「もっとこう……
封印をバンッて押さえ込むとか……
光が出るとか……
何かあるんじゃないの……?」
琶
「おまえが期待するようなことは起きない」
ふっくら
「読者の期待も踏みつぶしていくスタイル!?」
ふっくらは仕方なく立っていた
数分
数十分
変化なし
ふっくら
「……ねぇ琶。
封印って……どれ?」
琶
「足元だ」
ふっくら
「足元!?
わたし今ずっと踏んでた!?
封印踏んでたの!?!?」
琶
「封印だから問題ない」
ふっくら
「意味わからん!!
封印って踏んでいいものなの!?
世界観どうなってるの!!?」
風がふっと止む
空気が少し重くなる
遠くで小石が転がったような音――
ふっくら
「……いまの何……?」
琶
「知らん」
(知ってる顔)
ふっくら
「いま知ってる顔したよね!?
絶対知ってるでしょ!!
なにこれ!? 何か始まるの!?」
琶は読者のほうをちらっと見て
ニヤッとしたような表情で言う
「……始まらない」
ふっくら
「なんで!?
今の間は絶対何かの“前兆”だったよね!?
わたしの緊張返して!!!」
数秒の静寂
何も起きない
本当に何も起きない
ふっくら
「終わってるやつ!?
これもうすでに封印終わってるやつ!?!?」
琶
「封印とは大体…終わっているものだ」
ふっくら
「意味深に語らないで!?
読者が勝手に深読みしちゃうから!!!」
風がまた吹き始めた
世界も空気も
何事もなかったかのよう
琶
「では、帰るぞ」
ふっくら
「終わった!?
ほんとにこれで終わり!?
なんにも出なかったよ!?
何も封印されてる気しないよ!?!」
琶
「……封印とは“何も起きさせないためのもの”だ」
ふっくら
「言い方がこわい!!
読者向けにもう少しやさしく言って!!!」
琶はふっくらの頭を軽くつつく
「気にするな。
おまえが気にすると封印が揺らぐ」
ふっくら
「揺らいだらどうなるの!?
わたしに責任あるの!?
やだよ!!!」
琶
「もう揺らがない」
ふっくら
「なんで今さら安心させるの!?!」
ふたりは荒野を歩き去る
ふっくらの影が小さく揺れ
琶の影が長く伸びる
その足元にある“封印の石”は
ほんの一瞬だけ
かすかに光った気がした
ふっくらは気づかないまま
今日もゆるい仕事を終えた