テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
長い夏休みが終わり、
学校が始まって数日。
制服を着て電車に揺られる朝は、
まるで何もなかったようにまた続いていく。
けれど俺の中に溜まった重さは、
どんどん膨れて、
もうごまかしきれなくなっていた。
授業中
ノートに視線を落とすふりをして、
何も感じられない自分に気づく。
心に透明な板ができて、
外の楽しさも悲しみも
弾いてしまうみたいだ。
それでもグループの誰かが
「今日どうする?」
「また遊びたい」
と言えば、
「いいね」
「行くよ」
と自動的に返事してしまう。
本当は、どうしたいかすら分からなかった。
ある金曜日。
放課後になり、
駅前にいつもの4人がそろう。
tr「久しぶりに俺んち来いよ!」
pn「ゲーム大会!俺、今回こそ勝つから!」
sn「ぺいんとさんが負けたら罰ゲームして下さいね?」
みんな、いつもと変わらず明るい。
でも、その中で俺は限界だった。
家に帰るふりをして足が止まり、
公園の隅にしゃがみこんでしまった。
3人が不思議そうについてきて、
「どうかした?」と問いかける。
俺はうつむいたまま、しばらく黙っていた。
——もう、笑うのも、
何かに混ざっているふりするのも、
無理だ。
kr「……なんで、みんなみたいに楽しそうにできないんだろ」
力なく口を開く。
kr「部活も、遊びも、グループLINEも……
俺だけ、全部外から見てるみたいで、
全然笑えないし、なんか、
ちょっとずつ壊れそうなんだ」
しにがみが、小さく息をのむ。
sn「クロノアさん……」
みんなと一緒にいるとき、
何も考えずに笑えてるような
フリしてたけど、
本当は怖かった。
みんなから置いていかれるのも、
“いつものクロノア”
じゃない自分がこの中にいることが、
kr「もし気づかれて、嫌われるんじゃないかって……」
言葉が途切れ、息が詰まる。
ぺいんとがそっと腰を下ろす。
pn「嫌いませんよ、そんなの」
トラゾーの声も静かだった。
tr「別にクロノアさんが無理してるとか、今初めて知ったけど……そういうの言ってくれて、ちょっと安心した」
しにがみも目をそらさず、
sn「僕だって、時々自分が何やってるか分からなくなりますよ」
とつぶやく。
tr「クロノアさんだけじゃない。多分さ、俺たち全員どこかで“フリ”してる」
ぺいんとが明るく笑った。
pn「それでもさ、俺ら、ずっと”友達”だろ?」
言葉はうまく返せなかった。
ただ、はじめて本音を出せた気がして、
俺の胸の底にこびりついていた重さが、
少しだけ軽くなったような気がした。
誰の顔も、
無理やり笑ってなんかいなかった。
沈黙のあと、トラゾーが
tr「泣きそうな顔してんなw」
とちゃかし、
しにがみくんがコンビニで
アイスを買ってきて、
sn「はい、これ食べて落ち着いて下さい」
と渡してくる。
いつもどおりのバカ話の中で、
俺ははじめて
“透明じゃない自分”
としてそこにいてもいいんだ、と
ほんの少しだけ思えた。
コメント
4件
今回も神ってる!私もよくフリをしてるなぁ
クロノアさん!!大丈夫か?! 日常組のみんな優しすぎて死ぬ!! 確かにうちもフリをしてるのかなぁ、 てか、本当に🥀ちゃん天才だな?