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もう10話 は、はやっ……
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呼び出しは、あまりにも静かだった。
【面会要請】
対象:rbr
立会:書記長tn
同席者:総統gr
前線拠点の一室。
警備は最小限。
だが、その場に集まる人物の重みが、空気を歪ませていた。
「……入れ」
扉の向こうにいたのは、二人。
机のそばに立つ書記長tn。
そして、窓際に背を向けて立つ男。
「顔、上げてええで」
低く、落ち着いた声。
振り返ったその人物を見て、rbrは息を飲んだ。
――総統gr。
威圧はない。
だが、視線が合った瞬間、
逃げ場がないと直感した。
「前線の空気はどうや」
雑談のような問いだった。
「……厳しいです」
「正直やな」
grは小さく笑う。
「それでええ。
前線を美化する兵士は信用できん」
tnが一歩前に出る。
「では、非公式の確認を行います」
机の上に、いくつかの記録が並べられる。
「A国生まれ。
違法移民。
市民権候補者」
淡々とした声。
「問います。
あなたは、A国に戻りたいと思いますか」
一瞬の沈黙。
rbrは、考えてから答えた。
「……戻る場所は、もうありません」
tnは表情を変えない。
「では、wrwrd国に忠誠を誓えますか」
grが、その様子を黙って見ている。
「誓います、とは言えません」
空気が張り詰めた。
「ただ——」
rbrは続ける。
「ここで生きるために、
命令には従います」
tnが視線を上げる。
「感情ではなく、条件付きの忠誠ですね」
「はい」
grが口を開く。
「正直や。
俺は、そういうのが好きや」
tnが一瞬だけ驚いたようにgrを見る。
「忠誠心は、感情に任せると裏切る」
grはrbrに視線を戻す。
「条件を理解した上で従う兵士は、
裏切る時も理由が分かる」
それは、評価だった。
tnは端末を操作する。
「最後の質問です」
「もし、
あなたの市民権取得が
国家に不利益だと判断された場合」
「それでも、任務を続けますか」
rbrは、迷わなかった。
「……はい」
「なぜ」
「ここで生きると、
自分で決めたからです」
沈黙。
grは、ゆっくりと息を吐いた。
「合格やな」
tnが確認する。
「どの点で、ですか」
「“自分で決めた”言うた」
grは淡々と告げる。
「流される兵士は使えん。
自分で選んだ兵士は、
責任から逃げん」
grはrbrに向かって言う。
「安心せぇ。
今すぐ市民権をやる気はない」
残酷なほど正直だった。
「せやけど——」
一拍置く。
「お前を切る判断も、
今はしない」
それは、国家としての仮承認だった。
面会が終わり、廊下に出たrbrに、tnが声をかける。
「覚えておいてください」
「総統は、
あなたを“守る”ために呼んだのではありません」
「……はい」
「“使えるかどうか”を、
直接見ただけです」
それで十分だった。
前線拠点に戻ると、zmが待っていた。
「顔見せ、終わったか」
「……はい」
「どうやった」
rbrは、少し考えて答える。
「試されました」
zmは小さく笑う。
「それで生きて戻ったなら、上出来や」
その夜。
国家中枢の記録に、一文が追加された。
対象 rbr
評価:保留
理由:自律的判断能力あり
継続観察
それは、処分でも承認でもない。
――可能性として、残された。
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ぬーん
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