多分ようやくイタ王とナチス出てきてくれる……..はず
注意:暴力的な描写有。(具体的に言うとパラオが殴られます。ダメな人はブラウザバック!!)
今回も長いっすよ!そろそろ完結が見えてきた……かな?
では、どうぞ~
パラオは心地良い眠りの中に身を委ねていた。
このままずっと居たいと思うほど、頭がぼんやりとふやけて気持ちがいい。
そうしてあと何時間か眠り、ゆっくりと水から引き上げられるように目が覚めるはずであったのに……
「いっ……..?!」
頭に猛烈な痛みを覚えてパラオは飛び起きた。
「ァ………ッ」
頭がぐらぐらと揺れていて、痛みはじんじんと頭全体に広がっていく。パラオは頭を押さえた。
「さっさと起きろ、パラオ」
冷酷な声にパラオが思わず顔を上げると、相変わらず濁った瞳をした日帝が傍にいた。
眉間に皺が寄っていて、普段ならば絶対に見せない鋭い苛立った表情にパラオの背筋が凍る。
「……..ナイチ………?」
パラオがそう呼び掛けると、日帝はこの上なく不機嫌な顔をし、
「その呼び名を貴様が使うな、敵国が」
そう言うと、パラオの腹を殴りつけた。
「がっ……….?!」
衝撃で胃液やら何やらが込み上げてきて、その場に吐き出してしまう。薄っすらと赤いものも混じっており、パラオは戦慄した。
「あ~あ、汚れちゃったんね~」
「腹を殴るのはないんじゃないか?」
突如として響き渡った声にパラオは辺りを見回す。
「……….あ……..」
イタリア王国と、ナチスドイツであった。
(ここ……..やっぱり枢軸軍の……..)
「フン、顔を殴って腫れにでもなったら話せないだろうが。」
「腹も十分しゃべれなくなると思うんね……」
「そもそも、パラオはお前の味方だったんじゃないのか?」
ナチスの言葉にパラオは顔を上げる。
(そうだよ、ナイチ!僕はナイチの味方…….!そうだって何回も言ってきたしナイチにも言ってもらった!きっと…..)
だが、パラオの淡い期待は直ぐに打ち砕かれることとなる。
「連合国側と内通していた国なんざ味方じゃないな。…….パラオ、貴様には失望した」
パラオの鼓動が早くなり、直ぐにそれは頭まで駆け巡る。
(なんで……ナイチ……….!)
そこでパラオは思い出した。
(そうだ、これは本物のナイチじゃない………!)
完璧に別人だと分かったパラオはもう物怖じしなかった。
「ナイチ」
落ち着いてパラオはその名を呼べた。
「貴様、その呼び名は使うなと…….」
「ナイチはソ連やアメリカに復讐したいんだよね?」
にっこり笑って問うと日帝の動きが止まる。
「……ああ、そうだ」
「じゃあ、歴史くらいは知っておいた方がいいよね!」
パラオが提案すると、三人は何を言っているんだというような顔をした。
「そんなもの……」
「学ぶ必要もないんね~」
「何を言っているんだ、パラオ?時間稼ぎのつもりか?」
日帝の指摘は図星だったがそれをひた隠してパラオは笑って言う。
「だって、ナイチたちが居なくなってから80年くらいたってるよ?例えば、ソ連とかは居なくなっちゃったし~」
「ソ連が消えた?!」
「そんなことが起きてたんね?!」
イタ王とナチスは驚きを隠せないようで、ようやく歴史を知ることの重要性に気付いたようだった。
「えっと、ナイチたちが居なくなってから~……」
パラオは順を追って話し始めた。
「まあ、ざっとこんなところだよ」
(これで今はみんな仲良くやってるってわかったはず……!)
「ふむ……ソ連は今はろしあ、とかいう国と代替わりしたのか」
「それじゃあロシアをぶっ潰せば解決なんね~!」
「?!」
戦闘を諦めるどころかむしろ闘志が増している様子の三人にパラオの身体が戦慄く。
(やっぱり、僕じゃ無理……?)
諦めかけたところで、ある一つの切り札の存在を思い出した。
(発信機!)
パラオの左手首には戦時中に日帝が連絡を取れるようにと埋め込んだ発信機がある。モールス信号を送ることが出来て、今は日帝だけでなく日本、アメリカ、イギリス、諸島たちにも繋がるようになっていた。
(このナイチの身体は一応日本のものだし、日本に繋がらないようにすれば位置情報くらいは送れる!)
パラオは早速発信した。
(---・- ・・- --・-・ ・・ ・・・- ・・・- ・・ ・-・-・ ・・-- -・-・・ ・・-・)
短い文章と共に、日本以外の国に信号を届ける。
「………パラオ」
突如として日帝が発した言葉にパラオの身体はびくりと跳ねる。
「次、余計なことをしたら斬るぞ」
顔だけ振り向く日帝の眼は血のような紅に染まっていて、パラオは自分の心臓が射抜かれているような気分になった。
ヒュッと自分の喉から奇妙な音が鳴る。
(バレていた……?!)
「なあ、それより日帝、お前、その刀まだ使えるのか?」
「……もちろん…………なあ、そうだろ?朝藤」
(ナイチ、そんな名前の刀なんて、持ってたっけ……?)
「刀に話しかけるとか、ちょっと気持ち悪いんね……」
「煩いぞイタ王」
「誰だってそう思うんね!」
一見ほっこりするような会話だったが、常に感じる強者感と重圧でパラオは生きた心地がしなかった。
「……..この名前は、枕草子から取った。」
「!枕草子、知ってるんね!『春はあけぼの』ってやつなんね!」
パラオは内心驚く。日本の相当昔の文化を遠く離れたイタリア王国が知っているとは思いもよらなかったからだ。
「ああ。『春は、あけぼの。やうやうしろくなりゆく山ぎは 、すこし明かりて、紫むらさきだちたる雲の、細くたなびきたる。』」
すらすらと全文を言って見せた日本に、イタ王からは拍手が上がる。
「でも、ioは春も夏も秋も冬もぜーんぶピッツアだと思うんね!」
「暴論だな……」
ナチスがタバコをふかしながらため息を吐いた。
「それより、復讐と言ってもいつ行くんだ?」
ナチスの疑問を、笑って二人はあしらった。
「それは心配しなくていいんね~」
「こちらから行かなくても、勝手に飛び込んできてくれる。愚かなことにな……」
そう日帝が言った直後の事だった。
何かが破壊される音がし、建物はぐらりと揺れた。
「言った傍から来たな」
「ね~、パラオはどうするんね~?」
イタ王に指さされ、パラオは震える。
「まだコイツにも利用価値がある」
そう言うと、日帝は後ろ手に縛られているパラオの両腕を持ち上げ、移動させた。
「あ~、なるほどぉ~」
イタ王の笑みに狂気が含まれる。パラオは値踏みするような瞳で見つめられびくりと震えた。
(人質……)
先程からパラオに連絡を取ることも許していたのはこのためだったのかと歯噛みする。
「ねえっ、ナイチ、もうやめようよ……!こんなことしても意味ないよっ!」
パラオの懇願に返ってきたのは容赦ない日帝の拳であった。
「うっ………..!」
額に近い部分を殴られ、激痛が走る。先程後頭部に受けた拳よりも格段に力が入っていたようだ。
「これでも気絶しないんね?パラオは頑丈なんね~!……沢山遊べそうなんね~♥」
熱を帯びた瞳にねっとりと舐め上げられたような感触がし、パラオは背筋が寒くなった。
(僕、このままここにいると死んじゃいそう……!遊ぶっておもちゃのぬいぐるみみたいに振り回したり窒息するぐらい抱き締められたりするってことでしょ?!)
「やめろイタ王、気色悪い……まあ、教育した甲斐があったか……え、変なことしないよな?」
その発言に、パラオは腑に落ちないものを感じる。
(……?なんでナイチが僕に色々教えてくれたことは知っているのにモールス信号は知らないんだろ……?)
しかし問うことも出来ず、日帝に引き摺られていくのであった。
「おい、パラオを返せ日帝!!」
日帝たちが入り口付近に到着するや否や、アメリカの怒声が聞こえた。
「返すも何も、パラオは俺が育てた守護者だぞ?勝手に横入りしてきているのは貴様の方だろうが」
日帝は冷静な声音で返す。
パラオが顔を上げてみると、そこにはアメリカだけでなく、イギリス、ロシア、中国がいた。
「連合国軍でのお出ましってわけか」
ナチスがメンバーを目を細めて観察する。
「大人しく肉体を元の持ち主に返すアルよ、日帝、ナチス、イタ王」
中国が冷静に説得するが、イタ王はすっとぼける。
「返すって何のことなんね~?この体はもともとioのモノだったんね!」
「そんなわけないでしょう?!それぞれ肉体を持っているのですから、あなた方が今いる肉体はあなた方の後継のモノですよ!」
イギリスが反論するも、イタ王には届いていない様子だった。
「そんなわけあるんね!ioたちの可愛い後継ちゃんの体なんだから、大切に教育するのは当たり前なんね!」
イタ王はむっと頬を膨らませる。
「ioたちがちゃ~んと教育してたはずなのに連合国と仲良くする後継ちゃんたちが悪いんね~!」
______この人たちは、未だにあの頃から抜け出せていないんだ。
パラオはそう思った。
(まだ、終戦を認めていないから、僕の話を聞いても、仲良くやってる僕たちの話を聞いても攻撃をやめなかったんだ……)
この三人はきっと、まだ第二次世界大戦の真っただ中にいるのだろう。
パラオはようやく悟ったが、もう遅い。それに、それを分かったところで打つ手はない。この三人に何を言っても無駄だということが分かっただけなのだから。
「……くだらないことを言うな。」
何とか説得を試みる守護者たちを言葉で切り捨てた日帝は、おもむろにパラオを掴んで見せつけるように持ち上げると、首元に刀の刃を当てた。
「なっ?!」
各国に動揺が走る。
「攻撃しようとしたら首が飛ぶぞ」
日帝はパラオの首に刃を食い込ませる。
「……….ッ」
微かに皮膚が切れ血が滲み、パラオの目元が戦慄く。
と、いきなり日帝は立てかけてあった刀のうち一振りを手に取ると、外に広がる森の木々のうち一本を刀で指した。
「ああ、フィンランド、狙撃は無駄だぞ。俺がやられてもイタ王やナチスが即座にパラオの頭を撃つ。」
そう日帝が言い放った時、風もないのに木の葉がガサガサと騒めいた。おそらく撤退したのであろう。
視線は依然としてアメリカの方に向いているにもかかわらずこの視力の良さ。
後方支援をしてもらう予定だったのにいきなり作戦の一つが潰れた。
イギリスは三人がかりで脅してくることに怒りをあらわにした。
「卑怯な……」
イギリスの言葉をナチスが鼻で嗤った。
「お前らだって散々卑怯な手を使いやがっただろうが、外道め」
その言葉を聞き、アメリカの頭に、原子爆弾を落としたときの記憶が蘇った。
『お前の心は痛まないのか?!この鬼畜米帝がッッ!!!』
切羽詰まった怒声が今でも鮮明に耳に残る。
(……俺だって、好きで落としたわけじゃ、ないんだよ)
心の中で、日帝には言えない言い訳を呟いた。
「さて、パラオの命が惜しいなら俺たちと戦ってもらおうか?」
日帝が二振り目の刀を手にして凄む。
「ioたちが呼んだ人は順番にioたちと戦ってもらうんね!」
イタ王が銃を手に恍惚とした表情で言い放つ。
(勝てるわけがない!)
パラオは心の中で叫んだ。
(体術や純粋な戦闘の面じゃ昔を生きたナイチたちには敵わないよ!)
これが軍隊や戦車でも動員出来たらまた別だったのだろうが、そんなことをしている余裕はないうえに、動員すると”戦争”という扱いになってしまう。
大国揃いの連合国としては、意味のない戦争と戦力低下は避けたかった。
しかし一国の命を握られているとあっては出るしかない。
「……俺が行こう」
最初に歩を進めたのはアメリカだった。
「戦ったら、パラオを返してくれるのだろう?」
「ああ。約束は守る。」
日帝の言葉に安心し、アメリカは銃口を日帝に突き付けた。
「じゃあ、戦おうか」
何処までもさらりと言ってのけた。
ありがとうございました!
パラオが純粋でよかった……パラオに手ェ出したら死刑だぞイタ王!
恐らく次回、次々回あたりで終結すると思いますのでお楽しみに!
では、またお会いしましょう~
追記:パラオが純粋でよかったです
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