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「先程のジュエリーはピンクサファイアのをあしらったもので、こちらがピンクルビーのものです。区別のつきづらい2つの宝石です」
もしかして、先程、他人と彼を間違えたことで彼は気分を害しているのではないだろうか。
これほど優しく丁寧に接してもらっているのに、私は申し訳ない気分になった。
当然紹介されたジュエリーのセットは購入した。
「私には区別が付きます。ルイ王子とレナード王子の区別も今はついています」
私はその後、紹介されたジュエリーも全て購入してしまった。
持っているお金がギリギリで足りた時、ほっとしたことを覚えている。
それ程に正常な判断を失った幸せな夢のようで、悪夢のような不思議な時間だった。
「カルロス、まっすぐにレオ国戻りますよ。もう、寄り道は一切致しません。途中、お腹が空いたら草でも食べましょう」
たったの15分程で一文なしになってしまった。
お金が足りない事態だけは防げてよかった。
足りなかったら、臓器でも売って工面していただろう。
きっと私が臓器を売ってくると言っても、レナード様は美しい微笑みを浮かべてお金を持ってくるのを待つだけだろう。
「イザベラ様、先程の宝飾品店に返品しに行ったらいかがでしょうか」
カルロスが意を決したように、私に助言してくる。
「そのような事をするくらいなら、餓死した方がましです。すみません、カルロス。明らかに今もまだ正常な判断ができる状態ではなく頭の中が霞がかっています。馬車に乗りっぱなしでも2ヶ月はレオ国までかかりますね。途中、飢えそうになったら宝飾品を売りますから許してください」
レナード様に遭遇した女性はこのような目にあうのだろうか。
15分程彼の時間を使っただけで、自分の全財産で間に合ってよかったとさえ思えてくる。
珠子時代、散々なクソ男に弄ばれ恨んできたが、女に恨まれず弄ぶ彼はまさにプロの仕事をしている。
「イザベラ様、なんとか3食とれるよう私が道中工面しますから、ご心配なく今はゆっくりとおやすみください」
カルロスが全ての火の粉をかぶると言っている。
「自分でも信じられないのです。レナード・アーデン侯爵はサイコパスか何かですか、新宿のナンバー1ホストが憑依してますかね。このような11歳の少女から大邸宅が買えるような金額を15分程度で絞り出したのですよ。遠い国から来ていると知っているのに、私が帰れなくなるかもしれないなんて気にもしてくれませんでしたよね。優しくされて子供が好きなのかと勘違いしましたが、彼は子供も女も金づるとしか思ってませんよね。なぜ、私が子供のくせにお金を持っていると分かったのでしょう、お金に対する嗅覚が凄過ぎます。でも、夢のような時間だったんです。思い出としてこの宝飾品は売りたくない。売ったのがバレて彼に失望されたくないとさえ思います。ルイ王子に会いたいです、ルイ王子とレナード様が似ているなんてとんでもない。ルイ王子は私のことを人として大切にしてくれます。少し寝たら正常な判断ができるようになると思います。カルロスお休みなさい」
私は珠子時代ホストクラブに行ったことはなかった。
行ったら先程のように一文なしになっていたのだろうか。
レナード様に会わなければ余裕のある旅ができたのに、出会えてよかったと客を帰らせる彼は超一流のホストが憑依しているに違いない。