テラーノベル
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朝は、
いつもと同じように始まった。
目覚ましが鳴る前に、
目が覚める。
カーテンを少しだけ開ける。
昨日と同じ白い光。
スマホは、
まだ伏せたままだった。
画面を見なくても、
通知が増えていないことはわかる。
洗面所へ行く。
水を出す。
顔を洗う。
冷たすぎない。
鏡の中の自分は、
特別な顔をしていなかった。
歯ブラシを口に入れたまま、
スマホを手に取る。
画面が点く。
――通知なし。
マッチングアプリを開く。
昨夜の画面が、
そのまま残っている。
涼真
それ、何で聞いたの?
既読は、ついていない。
未読でもない。
ただ、
そこにある。
アプリを閉じる。
代わりに、
ニュースアプリを開く。
天気。
株価。
事故。
スクロールしても、
引っかかるものはない。
通勤の準備をする。
服を選ぶ。
迷わない。
バッグに、
財布と鍵を入れる。
スマホも、
入れる。
玄関で立ち止まる。
ドアノブに手をかけたまま、
一度だけスマホを見る。
通知は、ない。
それなのに、
少しだけ、
待ってしまう。
何を、
待っているのかは、
わからない。
電車は、
いつも通り混んでいた。
人の肩。
スマホの画面。
イヤホン。
誰も、
こちらを見ていない。
それが、
普通だった。
会社に着く。
挨拶。
コピー機の音。
キーボード。
昼休み。
コーヒーを買う。
昨日と同じ銘柄。
砂糖は、
入れた。
カップを持ったまま、
スマホを見る。
――通知、1件。
一瞬だけ、
息が止まる。
画面を開く。
涼真
ごめん、変な言い方した
その下。
涼真
住んでる場所って
会う前に聞くものだと思ってたから
指が、
止まる。
画面の文字は、
続いている。
涼真
あ、嫌だったなら
答えなくていい
カップの中で、
コーヒーが揺れる。
誰かが、
後ろを通る。
「大丈夫?」
同僚の声。
「うん」
そう答えた声は、
いつも通りだった。
スマホを見る。
送信ボタンの上で、
指が止まる。
嫌だったかどうか。
そういう話だっただろうか。
もう一度、
画面を見る。
涼真
会う気、ないなら
最初に言ってほしい
——静止。
指は、
動かなかった。
周りの音だけが、
続いている。
(無音)