『最後までしない為ならば、何でもするんですよね?じゃあ、コレを咥えて、アンタの口をオナホ代わりにさせて下さいよ、ご主人様』
我ながら巫山戯た発言だとは思うが、言うのを止められなかった。元の世界へ戻ったら恋しい者が居るらしい相手を好きになってしまった事を憎らしく思う。いや……大事な奴だったか?まぁいい、どっちだろうが意味に大差は無い。マジで相手を殺したい。『んな奴がいるくせに恋愛シミュレーションゲームにやって来るな』と恨言の一つも吐き出してしまいたいが、そういった世界だとは知らずに来た事は確かなので文句も言えない。
この世界へは望んで来たのか、違うのか。
此処へ至った過程すら知らないので『じゃあ、何で来たんだ』とも口に出来ず、つい八つ当たりするみたいな態度になってしまう。興奮も重なって、上手く猫を被った言葉遣いも保てないが、もうどうでもよかった。
『巫山戯るな、死ね』くらいは言われるかと思ったのだが、焔は口をへの字にし、頬と耳を真っ赤に染めながら黙りこくっている。許可はされていないが拒否もされていない事から俺は、焔の顎をくいっと持ち上げながら口に親指を入れ、美味しそうな舌をぐっと指先で少し押し込みながら大きく口を開かせた。
くちゅりと溢れ出る唾液が指を伝い落ちるが、抵抗する気配はやはり無い。これはこちらの独断的な要求を受け入れるつもりでいると判断してもいいのだろうか?
「いい子だな、焔。そんなに俺のモノを味わいたの?……ホント、淫乱な奴だ」
初心な鬼だと思っていたのに、何処の誰ともわからぬ者の手で既に開発済みなのだと思うと無性に腹が立つ。でも……だからってコイツを汚いとか、もう触れたくないだなんて感情は微塵も湧いてこない。
むしろ、目の前の彼の全てを、早急に自分色へ染め替えてしまいたい。
立ちはだかる事実に苛立とうが、結局辿り着く考えはこれだ。どんな障害があろうが、焔が好きだと思う気持ちが揺らぐ事は全く無い。おかげでこの感情が、企画通りの展開へと強制されたものではないと、より一層強く確信する事が出来たから——無理にでも……喜んでおこうかと思う。
ペタンッとベッドの上で子供みたいに座る焔の前で膝立ちになり、寝衣の中から既に晒していた陰茎部を手で掴み、焔の艶やかな唇に当てる。小柄な彼の口はどうしたって小さく、無理に押し込めば彼の口の端が裂けてしまいそうだ。他に鬼らしい鋭い八重歯の存在も気になった。
「噛まないで下さいね」
色々と心配事はあるものの、フェラチオの誘惑には勝てず、熱い口内へ陰茎をゆっくり押し込んでいく。うぐっと苦しそうな声をこぼしつつも、焔は必死に出来る限り大きく口を開けてくれ、俺のモノを体内へと受け入れてくれた。
「ふぐっ、んっ、っんん!」
目隠しのせいで見えないが、きっと布の下では涙目になっているに違いない。
焔の頭を強く両手で掴み、宣言通り道具みたいに無遠慮に腰を動かす。その度に嗚咽に近い音が聞こえたが、舌のざらつきや唾液によるヌメッとしか感触が気持ち良すぎて止まらなかった。
愛しい焔が、俺のモノを必死に咥えている。
その事実だけでもう、意識がすぐにでも飛びそうなくらいの状態になってしまう。射精したい、この可愛らしい口の中に全てを流し入れてしまいたいとしか考えられなくなっていく。
「焔、様……誰にも、誰にも渡したく、無い……俺だけ、の……あぁっ」
本心が口から出てしまったが、焔には聞こえていない気がする。俺のせいで呼吸が苦しく、喉も詰まり、酸欠状態に近いのではないだろうか。だが、そうかもとは思ってもやはり止めるという選択肢が選べない。『この鬼は俺のモノだ』と主張するみたいに根本まで押し込み、黒髪をギュッと強く掴んだ。
「んっ、ぐ、ふ、んんっ」
苦しそうな声をあげながらも、焔が腰を少しもじっと動かしている事に気が付いた。まさか、口内を犯されて気持ちがいいのだろうか?お互いの体勢的に、モノを弄ってやれない事が悔やまれる。
「腰、動いてますよ?犯されて気持ちいいとか……変態だな」
俺の発言が癪に触ったのか、焔が口を離そうとした。が、その事を先に察した俺は頭を押さえ付ける手に力を入れて、口内のより深くまで陰茎を押し込んでやった。根本までしっかり咥え込んだせいでより一層苦しくなったのか、焔が俺の脚にしがみついてくる。寝衣の布に爪が刺さり、肌をも傷付けられたが、そんな痛みすら心地いい。彼が与えてくれる全てが愛おしく感じてしまう。
「腰、止まんなっ……。気持ちぃ、もっと、いいっ!」
自分でも『発情期の猿かよ!』とツッコミを入れたくなるくらい、腰を振るをの止められない。気持ちいい、もっともっとこの快楽に溺れ、焔を自分だけのモノにしたい。一つになりたい、離れたく無い、ずっとこのままこの享楽に浸っていたい。
好き勝手に動き、快楽の先へと手を伸ばす。彼の苦しがる声や水音が聞こえ、興奮は最高潮まで達した。
「で、出る!——イ、イクッ」
早くイケッ!と言うみたいに舌を不規則に動かされ、目前に迫っていた瞬間をとうとう迎え入れてしまった。怒張する陰茎が膨れ、ビクビクッと波打ちながら白濁液を大量に放出していく。耳をすませば射精音まで聞こえてきそうなくらいの勢いだ。
「全部飲めますよね?」
すぐには抜かず、頭を優しく撫でる。柔らかな声色で言いはしたが、ちゃんと全て飲み込むまで離してやるつもりは一切ない。食事の必要が無い焔の体に己の最もいやらしい液体が吸収され、体を構築し、今後の糧となるのだと考えるだけで、また勃起しそうなくらい興奮した。
ゴクンッと一思いに全て飲み込んでくれたのが、喉に触れた手に伝わってくる振動でわかる。
「いい子だな。俺の精液は美味しいだろう?」
恍惚とした瞳でそう呟きながら、ゆっくりと口内から陰茎を抜き取る。達したばかりなのに、抜く過程でまた硬さを持ち始めてしまい、焔の前に再びその姿を晒した時にはもう完勃ちにまで戻っていた。猛々しく反り返り、腹にまでつきそうなくらいになっている。瞳は見えずとも焔の困惑した視線を感じ、俺はごくりと大量の唾を飲み込んだ。
「——ゲホゲホッ。……はぁはぁ……そ、そう毎度毎度、何度も続けてとか……無理だぞ?」
激しく何度も咳き込んだ後、動揺の混じる声で言われたが、興奮した男にそんな言葉が届く訳がない。
「焔様はマグロにでもなっていてくれて構いませんよ」
意味が通じなかったのか、何を言っているんだ感を漂わせながら「……マグロ?俺が魚に?」と訊かれた。
どこまで可愛いんだ、この男は。
コレで俺が初めての相手じゃないとか信じられないレベルの無知っぷりだが、後ろが開発済みなのは間違いないので、処女では無いはずだ。全てが全て元の世界で待つ奴の好みなのか?あー……マジで無理だ。苛立ちのせいで暴走しそうな感情が抑え切れない。
「最後まではしないで我慢してあげますから。それなら、貴方も文句は無いでしょう?」
「……あるぞ?体力というか、気力とかが、な?色々減る」
「寝ているだけでいいから、減ってもどうせ誤差の範囲ですよ。なので平気です」
トンッと焔の体を押し倒し、彼の上に覆い被さる。
「あー……そのなんだ、時間も減るぞ?ソフィアとの待ち合わせもあるし……な?」
ゆっくりとベッドの上で後退りをしながら、どうにか俺を説得しようとしているみたいだ。だがそんなのはまだ何時間も先の話しじゃないか。事後に風呂に入る時間を考慮しても、三、四回は余裕でイケるはず。
「でも、魔力の補充は大事ですよね?いつ何時、何に襲われるかわからないのですから」
ニッと笑って焔の返事を待たずに初々しく見える癖に実はそうじゃなかったであろう唇を、口で塞ぐ。そして舌を丹念に絡ませて反論出来ぬようにした。確定で最後までデキないせいで感じる虚しさからくる反動か、結局俺は、待ち合わせの時間ギリギリまで焔の事をベッドに繋ぎ止めてしまった。
リアンの言う『好き』は、本人が本気で思っている愛情ではない……はずだ。恋愛ゲームが故に持つ強制された感情なのだろう。リアンも自分も転移者だったのだし、ならば魔王をさっさと倒して一緒に元の世界へ戻り、その時改めて……奴の感情を、自分の考えをちゃんと確認したい。
——そう願うように、焔はなってきた。
元の世界になんぞ絶対に帰してなるものか。焔の手足を引きちぎってでも、心に決めた相手との再会なんか絶対にさせない!
——と、半端な情報からの思い込みと勘違いから、リアンもリアンで、勝手に決意を固める。
二人の考えがすれ違い、違うゴールを目標にしてしまう。
だがしかし、彼等の思いはすれ違えども、ベッドの上で深く絡み合う熱と匂いのおかげで、“名もなき森”だったノトスを目指していた竜人族のケイトがカバール村の上空を通過したが、リアンの匂いには気が付かれずに済んだ事は不幸中の幸いと言えよう。