テラーノベル
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ド、ド、ソ、ソ、ラ、ラ、ソ。
その旋律を、彼はまだ言葉として理解していなかった。
ただ、それは夜と一緒にやってきた。
丘の上は風が強く、草の匂いがした。遠くで犬が鳴き、町の灯りは小さく揺れている。空には無数の星。数えようとしても、途中で必ずわからなくなるほどの数。
「ほら、あれが一番明るい星」
母が指さした先を、少年は目を細めて追う。
どれも同じに見えるのに、不思議と“それ”だけはわかった。
「きらきらひかる、おそらのほしよ」
母の声は、歌というよりも語りに近かった。
けれど少年は、それを音として覚えた。
ド、ド、ソ、ソ――
「どうして光るの?」
「遠いからよ」
その答えは、少年にはよくわからなかった。
遠いと、光るのか。
じゃあ、自分も遠くへ行けば、光れるのだろうか。
母の膝に頭を乗せながら、彼はぼんやりとそんなことを考える。
星は瞬いていた。規則的なようで、どこか揺らぎながら。
その夜、彼の中に“何か”が残った。
名前のない感覚。だが確かにそこにあるもの。
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