玄関を開けると、少し体が軽くなった 気がする
さっき窓から見た景色とは打って変わって 濃い青と水の目みたいな綺麗な水色の グラデーションで、雲1つない快晴
全身で朝の風を浴びるとヘルメットを被り
自転車に跨る
風に誘われペダルを漕ぐと、
山道を抜け、左側全体に広い海が広がる
それと共に、薄い潮の匂いが 鼻をツンとさせる
俺ら家族がこの街に引っ越してきたのは、 水が小学生に上がる時
この頃の水の体調は何をやっても 悪くなる一方で、空気が悪い都会では、 さらに悪くなるのでは?という母の 考えから、田舎でも都会でもない ゆったりとした地域に引っ越した
そこから水の体調は回復して行ったものの
俺は前の街の方が好きだったから、
毎夜兄に抱きついて泣いていた
この頃は、兄も元気に学校に行っていたし
兄弟仲もギスギスした感じではなかった
いつからこんなことになったのだろう
考えるだけで頭が重くなる
まるで誰かが記憶のピースを
抜いたかのように、思い出せない
嫌な記憶は脳が消してしまうというし、
幼い自分にとって
大事な兄弟が壊れていくことは、
絶望的で、怖い出来事だったのだろう
暗い気持ちを晴らすために空を見上げると
アニメの世界でも入ったかのような入道雲
「うっわ、…すご」
思わす声を漏らしてしまったが、
周りが居ないためセーフ
「ホンマやね、めちゃ綺麗」
「うぇ!?…はぁ、なんだ白か」
「やっぱ黒くんおもろいわ〜w」
突然やってきて 笑うこいつは、
俺がこの地域に 引っ越してきた時の
初めての友達だ
タレ目で前髪の横にピョンッと跳ねている
髪がチャームポイントだとか
「おはよう、白」
「ん、おはよ」
挨拶が終わると気まずい空気が流れる
俺は別に家よりはマシなので平気なんだが
優しい白にとってはだいぶ苦痛らしい
「あ、そういえば今日遊ばん?」
「お、いいなそれ 」
「最近できたこの店が〜」と子供みたいに
はしゃぐ白を横目に、家族の事を考えた
水は大丈夫だろうか
兄が不機嫌になっていないだろうか
水が兄を怯えていないだろうか
喧嘩はしてないだろうか
そんな考えが頭に過ぎる
足が動かなくなって 、頭が働かない
「黒くん、?」
「黒くん、大丈夫?」
気づけば白とは1mぐらい差が開いていて
引きずっていた自転車も倒れかかっていた
動きたいにも足が動かなくて
話して誤魔化したくても言葉が俺の喉を
通ることが無くて
白の心配している眼差しを
ただただ見ていることしかできなかった
「黒くん!!??」
白の叫ぶ声でハッとするが、
脳は完全に理解していない
大量に出てくる冷や汗
それと共に溢れる涙
地面には倒れた自転車に、通学バック
視野がだんだん狭くなり、雑音が聞こえる
瞼を開けようとしても、重くて開けれない
苦しいな、痛いな
これを水が毎日味わってるんだ
辛いだろうな、変わってあげたいな
変わってあげることが出来たら
水も、母もどれだけ幸せだっただろう
そう考えているうちに、意識は途切れていった
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次回♡3000
コメント
3件
ふぁぁぁぁぁぁ!!(? なんかもう語彙力なくてごめんなさいって感じなんですがホントに雰囲気大好きです。心情とかの表現が素敵すぎます…✨
続きめちゃ気になる!
なんかめっちゃ変な所に改行がありますが気にしないで読んでください😭 次回 ♡3000 一体黒くんはどうなってしまうのか!