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「はっ!?マジで!?あんたヤバいな!!」
春香への想いと、大失敗に終わった
告白の流れを話すと、ケラケラと朋華に笑われた。
朋華は俺の唯一、全部本音を言える女友達。
小学校から一緒で、基本俺の性格も
だいたい理解しているが今回の件は
予想外だったらしい。
あれから数日経ち、毎朝の楽しみだった
「おはよう」も春香と交わすことはなくなった。
そりゃそうだろう、挨拶しかしないような
男から急に家電で好きです!なんて言われたら
誰だって話しずらくなる。
むしろ、俺がそれから遠ざけていたような気もする。
どうせ周りに知れ渡って、春香の耳にも
俺の思いが他の人を通じて届いてしまうなら、
いっその事、自分でちゃんと伝えたかった。
リスクを常に考える俺には珍しく、
玉砕覚悟というより、無謀の方が近い。
思った通り、数日経てば
ほぼほぼのクラスメイトが
俺が春香を好きなことを知っていた。
そうなると余計喋りづらい。
恭平や浩二にも茶化される。
いっそ、早くこの中学校という
鉄籠から逃げ出したい。
だけど、春香を諦めることができなかった。
フラれても好きで、だけど自分が
どうしたらいいのか、
どうしたいのかもわからなくて、
朋華に相談した。
朋華も一応女子だ、もしかしたら
なにかいい打開策を教えてくれるかもしれない。
「まっ、諦めないなら頑張れや!」
「頑張るって何を?」
「春香ちゃんへのアプローチに決まってんじゃん!」
「いやぁ…、無理じゃね?俺フラれたし」
「フラれても諦めれないなら頑張るしかないでしょ!どうせ、みんなも知ってる感じなわけだし、別にどう思われたっていいじゃん?」
「つったって、何頑張るんだよ?」
「まずは、挨拶から始めましょう!」
「えー……いやぁ…………へい。」
ってな感じで、朋華と何度か作戦会議を開き
ここから春香に振り向いて貰うため、
いくつかのアプローチをすることになる。
ちなみに恭平も相談にのってくれたが、
恭平自体、恋愛というものに疎く、
2人でその話をしてもお通夜になる為、
応援だけしてもらっていた。
まずは挨拶。
自分から話しかけなければ、どうにもならない。
朝、勇気を出して投げかける言玉
「……おはよー。」
「おはよう。」
見事キャッチボール成功。
なにか自分が凄い事を成し遂げたかのような達成感と同時に、
嫌われてはないみたいで少し安心した。
でもやっぱり、周囲の目が気になる。
春香と仲良い女子はニヤけ顔で俺を見る。
そんな目で、俺を見るな!!
でも、我慢。これは明るい未来の
自分の為の試練なのだ。
とりあえず現状、俺の春香への想いは継続中。
そしてほぼ同じクラス全員がそれを知っている。
でもまた挨拶はできるようになった。
というところで次の作戦が思いつかないまま
時は流れ、中学校3年生という
青春爆発期へと移行する。
大好きな先輩も卒業してしまい、
自分達が1番上の学年になってしまった。
ここ亀山中学校では、3年生になると
教室は1階へとなる。
ちなみに1.2年生は3階なので、
教室までグッと距離が縮まる。
まぁそんなことはどうでもよくて、
まず第1の難関が訪れる。
そう、クラス替えである。
2年生3学期までは同じクラス、
しかも席が後ろだったから、
まだ接点もあったのに
ここでクラスが春香と別々になれば
それはもう、距離が地球を超え、
銀河系ほど遠くなってしまう。
それは避けたい、絶対避けたい。
だが所詮は中学生。無力だ。
「先生、僕は春香さんと一緒のクラスがいいです!」
なんて担任に言ったところで、
「いかがわしい。学生の醍醐味は勉強です。」
とかなんとか言われて
あえて別々のクラスにされるだろう。
親父が校長先生だったら、なんとかなったかなぁ
と馬鹿なことを考えながらクラス一覧表に
目を焼きつける。
俺は3年B組だった。
朋華も恭平もB組だったが、浩二はA組。
春香の名前は、B組にあった。
神様は俺をまだ見捨ててはいなかった。
正直、朋華や恭平と一緒になれた喜びよりも
春香と一緒のクラスなれた喜びの方がでかかった。
すまん、友よ。
更にだ!!
まずは最初に班分けがある訳だが、
最初の班分けは出席番号順で決められる。
俺は相田(あいだ)健一なので出席番号2番。
春香は大代(おおしろ)なので出席番号6番。
この「班」には特典がたくさんある。
まず、給食を班ごとに机をくっつけて食べる。
道徳的な授業を班ごとに意見を出し合い共有する。
体育で班ごとに課題をこなすetc……
1番の特典は修学旅行。
修学旅行地である東京での自由行動は、
この班での行動となる。
俺と春香は1班だった。
こうなるとまゆつばだが、リアルだった。
有頂天とはまさにこういうことをいうのだろう。
ちなみに朋華は入倉という苗字で出席番号4番で、
同じ1班。完全に流れが来ていた。
恭平は坂上だったので2班だったが、
まぁ……いいだろう。
来たる1ヶ月後の修学旅行に向け、
表向きの作戦会議と裏向き(俺と朋華)の作戦会議が
度々、開かれた。
表向き作戦会議ではどこに行きたいとか、
タイムスケジュールを主に詰めていった。
裏向きの作戦会議では、どうやって
春香と2人で話すシチュエーションを作るかを
考えていたが、内容が未知数過ぎて
有力な案はなかった。
そんな中、とある休みに母親と一緒に
買い物に出かけていた。
俺は、反抗期って言うものに出会うことがなく、
決してマザコンではないが
基本的には母親とは仲が良かった。
道中、俺に衝撃が走った。
「携帯電話居る?」
「は?」
「お父さんと和樹(弟)に内緒であんたに持たしてあげようか?」
「いいんすか!?」
母親はその日のうちに、
本当に携帯電話を俺用に契約してくれた。
今の時代で使用するスマホと
違いガラケーもガラケー。
めちゃくちゃ初期の形状で、
今では超しょぼく見えるが
当時の俺にとって何よりも輝いて見えた。
ただ、契約での条件は付けられた。
それはリミッター。
携帯電話総使用料が3000円をオーバーすると
リミッターがかかり、強制的にメールの送受信、
電話をかけること、インターネットへの接続
が出来なくなるが、電話を受け取ることだけはできる。
更新月は毎月1日で、月末最終日から月が回れば
またメールの送受信等が可能になるというもの。
基本料金2300円で実質使えるのは700円分ほど……
まぁ許容範囲だ。
ちなみに同級生で携帯電話を持っていた人は
かなり少ない。だけど、朋華も持っているし、
春香も持っているというのは聞いた事があった。
ここでピンと来た。
修学旅行での目標ができた。
「春香のメールアドレスを入手する」
これが俺の修学旅行での最大の目的にして、
超難関ミッションだ。