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こんにちは!こうちゃです。
第4話になります。 注意事項は第1話をご覧下さい!
🇬🇧の軽い過呼吸表現あります。苦手な方はお気をつけください!少し強引な終わり方をしてしまったので、番外編を書けたら書きたいなぁと思ってます!需要があればですが…笑 では最終回、ぜひ楽しんで頂けたら嬉しいです✨️
「…はぁっ…!?…はっ…ひゅ…っ…」
胸が苦しい。心臓が破裂するほど暴れまわって息ができない。…夢…そう、夢だ。ただの夢。震える体を自分の両手で抱きしめる。大丈夫。昔の話だ。もう俺はあの頃のままじゃない。
「……アーサー…? 」
「……っひ…ぅ…」
俺は弱くない。もう怖くなんかない。
「アーサー…!」
なんともない、から
「っ…触んじゃねぇ!!」
パンッと乾いた音が響く。キーンと耳鳴りがして痛い。息ができなくて苦しい。
「……アーサー」
「っやだ…やだ…こっちに来んなっ!!」
もう、昔のことなのに。
「来んなって言ってんだろ!ばかぁっ!!」
まだ、怖くて震えが止まらないなんて。
「…アーサー、だいじょうぶだから」
そんなの、認めたくなかった。
「…っ…うっ…ひぐっ…も…やだぁ……」
涙がフランシスの肩を濡らす。抱きしめられた温もりが心地よくて、段々と息がしやすくなってゆく。
「だいじょうぶ…大丈夫だから、アーサー」
トントンとあやすように背中を叩かれて、恥ずかしいのに余計に涙が止まらない。離れようとしてもフランシスにがっちりと抱きしめられているせいで上手くいかなかった。
「……っ…ん…」
しばらくそうしていると段々と呼吸も整い、心が落ち着いていった。その代わりに羞恥心がぶわりと胸に渦巻く。どう言い訳してフランシスから離れようか必死に考えるが、良い案は思い浮かばなかった。
「…っふふ…落ち着いた?」
「…わっ…笑うな…ばかぁ……」
中学3年生になってまで幼馴染に泣きついてしまうなんて、恥ずかしくて死にそうだ。赤くなった顔を見られたくなくてフランシスの肩にぐりぐりと押し付ける。
「うん…ちょっとはマシになったかも。でもまだ熱いね」
フランシスは俺の首に触れて体温を確認したあと、頭をぽんぽんと撫でて立ち上がった。
「アーサーお腹すいてる?ポトフあるよ」
「……食う」
空腹を訴える体に素直に従うと、たくさんの野菜がたっぷり入ったポトフを差し出された。悔しいがフランシスのポトフは美味い。本人には絶対言わないけど。
「全部食べなくてもいいからね」
「……ん…」
スプーンですくったあと、ふーっと息を吹きかけて冷まし、口に運ぶ。身体中にじんわりと温かさが染みて、自然と肩の力が抜けていくのがわかった。フランシスは俺を見て緩く目を細めたあと、あのね、アーサーと話し始めた。
「嫌なことは嫌って言っていいんだよ」
「……は…?」
「…ごめん、スコットから聞いちゃった」
スコット、という名前を聞いて心臓がドクンと跳ねる。
「……っスコ兄…来てたのか…?」
「来てたって言うか、俺が買い物頼んだ。そのポトフもスコットが買ってきた食材で作ったんだよ。 」
「……なにっ…勝手に…!」
「心配してたよ、スコット」
俺が振り上げた拳を掴んで、フランシスがいつになく真剣な顔をして俺を見つめる。
「アーサー、お前が思ってるよりずっと、スコットはちゃんとお前のこと見てるよ。だからお前が無理してんのもわかってる。」
「……っ…」
「行きたくないなら…ここに居たいならここに居たいってちゃんと言いな。いくらなんでもスコットが可哀想だ。」
フランシスのラベンダーの瞳の中に映った自分は、酷く情けない顔をしていた。
「…だっ…て……」
「……怖い?」
「……っ…」
「でも、ちゃんと向き合わないと…アーサーもスコットも苦しいままだよ」
言われなくてもわかってた。言葉にして、伝えなきゃ…じゃないと、俺たち兄弟の関係はいつまで経っても改善しないままだ。
「…がんばろう?アーサー」
フランシスがぎゅっと俺の両手を握って花が咲くようにふわりと微笑む。つられて頷くとフランシスは満足そうに笑って俺の手を離した。
「…おっ…お前のためじゃなくて、俺のためだからな!!」
「うん、わかってるよ」
いつもふざけてばっかなのに、こういう時だけ余裕たっぷりで微笑んで、俺を子供扱いする。それが恥ずかしくてすごく 嫌なのに、強く拒絶できない自分が嫌いだ。
「それじゃ、この話はおしまい。」
パンッと手を叩いてフランシスが立ち上がる。
「ポトフまだ食べる?もういい?」
「……食う」
「じゃ、食べられるだけ食べて。今薬持ってくるから、それ飲んで早く寝ること」
わかった?と聞かれて無言で頷くと、坊ちゃんは偉いですねーとかふざけたことを言うから1発殴っておいた。
「……くそっ…」
1人きりになったリビングで悔しくて悪態をつく。年下だからっていつまでも子供扱いしやがって…いつか、いつか余裕綽々なあいつをギャフンと言わせてやる!そう心に決めて、少し冷めてしまったポトフを乱暴に口に放り込んだ。