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チャットノベルは上手く出来なかったので慣れ親しんだこちらで執筆させていただきます。
私は月の中でも三日月が特に好きです。次はいつ見られるかなぁ
「………では、今回の会議はこれで終了、ということで。解散!」
その声が聞こえると、国々が一斉にほっと息をついた。
名だたる国達による会議はたった今終了し、それぞれ帰り支度を始めていた。
「よお、Japan!」
国々の中で一際威圧感を与えていたアメリカ。だが、今は為政者としての顔を捨て、友人と仲良く話す一つの国であった。
「アメリカさん!本日はどうもありがとうございました!明日の会合も是非………」
「そういう真面目な話はナシ!今日はG7のやつらで飲みに行くんだが、日本も来るか?」
問われた日本は手帳を取り出して何やらぶつぶつと呟きながらページを捲っていたが、やがてため息を吐くと、
「すみません、アメリカさん……まだ次回の会議の資料作成と情報共有が終わってなくて……あ!来年度の予算編成も今週中に終わらせないといけないじゃないですか!…………今日は行けなさそうです……」
ずんっと肩を落としてため息を吐く日本の目は、お得意の社畜モードになっていた。
「いや、でも飲み会は付き合いとしてかなり大事……いやでも期限が……二日酔いも必ず起きるだろうし……」
手帳を見つめて悶々と考える日本を見かねて、アメリカが日本の肩に手を置いた。
「いや、すまなかった日本……飲み会はまたやるからその時に来いよ!珍しい日本酒用意しとくからさ!」
「ウォッカも用意しとけよ」
「うるせえなロシア!お前は呼んでねえんだよ!」
通りがかりにさらっと乱入してくるロシアを怒鳴りつけたアメリカは、未だ社畜モードの日本を慰めることに徹する。
するとそこに、またしても乱入してくる国が現れた。
「息子よ、お前も資料の作成が終わっていないのでは?」
「げっ、親父………」
「その反応は何ですか息子よ。はぁ…………全く、飲んでいる場合ではないでしょう?ほかの国々には今日の宴会のキャンセルは伝えてありますし、皆同意していました。早くやりますよ、来なさい……」
「は?!何勝手にキャンセルしてんだよ!」
イギリスは肩をすくめると、いつもの紳士面に似合わない力でアメリカの服を掴んだ。
「大体会議だというのにこのふざけた格好は何ですか?ロシアですらスーツを着てきたというのに……」
イギリスは日本の方に向き直ると、小さく礼をした。
「うちの馬鹿息子がお騒がせしましたね。それでは、次回の会議でお会いしましょう」
「はい!ありがとうございました!」
日本の返答を聞くと、イギリスは怒鳴り散らしているアメリカを引きずって退出していった。
「ちょ、待て親父!手料理の味見だけは絶対しないからな?!」
「あ~そういえば新作のスコッチエッグがありましたね~?」
「マジでやめろ!!真面目にやるから!!」
ピッタリ九十度の綺麗な礼をしていた日本は、アメリカとイギリスの声が消えると面を上げ、苦笑した。
そして日本もまた、こう呟いた。
「さあ、帰ろう」
日本は荘厳な建物から外に出た。
まだ肌寒いが微かに春の空気も感じられる。日本は空を見上げた。
「今夜は綺麗だな」
美しい曲線を描く三日月が空に浮かんでいた。天気が良く雲一つない夜空に黄金色の灯りが浮かんでいる。
「…………?」
綺麗だと思うのと同時に、日本には言いようのない感情が湧き上がってきた。日本自身もこの感情はよく分かっていない。ただ、毎月、下弦の三日月を見ると、日本自身ですら覚えのない燃え滾るような激情が薄っすらと浮かび上がるのだった。
第二次世界大戦は、日本は知識としては知っているが実際に体験したわけではない。生まれたころには、既に戦争が終わっていたのだ。何なら、国の再建も始まっていたので惨状すら目にできなかった。
『二度と戦争を起こさない』
そうは言っても、戦争が終わった後に生まれた日本やドイツ、イタリアはそれがどれほどの痛みだったのか知りもしない。
だから、日本はこの感情が湧き上がるたびに、業火を想像する。戦争とは、この身が業火に焼かれるほどに痛いのだと想像する。
だが、その程度では理解などできやしない。
日本は今日も、戦争の恐怖など知らないままに、ただ、声高に平和を叫ぶのであった。
ありがとうございました!更新頻度はかなり低いと思いますがお付き合いいただけると幸いでございます………