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次の日、学校で誰かの目線がやけに気になった。スマホを隠す手つき。囁き声。すれ違うたびに、一瞬だけ止まる空気。
(もしかして……私のこと?)
そう思ってしまうのは、たぶん自意識過剰なんだろう。
でも、実際にSNSでは、昨日の投稿がまだ伸び続けていた。
1万超えた。
リプ欄には“アイドルみたい”“芸能人だと思ってた”なんて言葉が並ぶ。
現実では誰も直接褒めてこないけど、
画面の向こうでは、誰かが私を特別だと思ってくれている。
──それだけが、救いだった。
⸻
放課後、帰り道のコンビニ。
コーヒー片手にSNSを開いた瞬間、また通知が入った。
《まだ気づいてないみたいですね。
「本物」になれる人と、なれない人の違い。》
またあのアカウント。
アイコンは初期のまま、名前も記号だらけで読めない。
私は怖さと好奇心の間で、そっとタイムラインをスクロールした。
それは、私じゃない誰かの投稿にリプライを飛ばしていた。
《彼女は上辺だけ。演じてる。中身がない。》
《この子じゃ、すぐ飽きられる。》
……私のこと、じゃないよね?
でも胸の奥で、イヤな感覚がぬるりと這う。
画面を閉じて、ため息をついた。
⸻
夜。布団に潜りながら、天井を見ていた。
「“本物”って、何?」
自分でつぶやいて、少し笑った。
この顔も、声も、投稿も、みんな“演出”だ。
じゃあ、演出じゃない自分って、どこにいるの?
もしかしてもう、誰にも見えなくなってるのかもしれない。
⸻
数日後。
またひとつ、DMが届いた。
《あなたにしかできない“役”があります。
でもそれは、「あなた自身」を手放せる人にしか与えられません。》
《それが、“バズる”ということです。》
そこには、ひとつのリンクが貼られていた。
(……なに、これ)
私は一度、スマホを伏せた。
でもその夜。
なぜか、指が勝手にそのリンクを押していた。
画面が真っ暗になり、
──そこに映ったのは、**“完璧すぎる私”**だった。