テラーノベル
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それからCMが開け、未解決事件調査隊では銚子による霊視コーナーが本格的に始まろうとしていた。
「では御船さん、霊視をお願いします」
貴船の静かな呼びかけに、銚子は小さく頷いた。
「はい・・・」
ゆっくりと目を閉じる。
その細い指先が、テーブルに並べられた遺品の上へ静かにかざされた。
その瞬間、スタジオに流れていたBGMが止まる。
まるで音という概念がこの世からなくなったのかと、錯覚させるほどの静寂がスタジオを包み込んだ。
壁掛け時計の秒針が時を刻む音だけが、異様なほど大きく耳へ届く。
そして、それ以上に、スタジオ中の人々の心臓の鼓動が、互いに聞こえてしまうのではないかと思えるほど、沈黙は深く濃くなっていた。
誰も息を呑み、銚子の一挙手一投足に注目する中、銚子はゆっくりと瞼を開けた。
「はい・・視えました・・・」
貴船が身を乗り出す。
「秋芳さんは?」
銚子は悲しげに目を伏せた。
「残念ながら秋芳さんはすでに亡くなられています」
銚子その言葉がスタジオに落ちた瞬間、観覧席で見守っていた遺族の一人が膝から崩れ落ち、堪えていた涙を溢れさせた。
嗚咽が静まり返った空間に響く。
貴船は言葉を失いながらも、小さく頷いた。
「そう・・ですか・・・」
銚子は再び視線を遠くへ向ける。
「そして秋芳さんは、数名の男性に
よって拉致監禁されていたようです」
貴船の表情が凍り付く。
「か、監禁ですか?」
「ええ・・また──」
銚子の声が一瞬止まる。
何かを見つめるように宙を見つめたまま、ゆっくりと言葉を紡いだ。
「『ナワバリ様』
そのような言葉が視えました」
「ナワバリ様・・ですか」
「このナワバリ様が何を意味
しているのか、それまでは分かりませんが・・」
一度息を整え、さらに続ける。
「四肢を縄で縛られた人々が視えました」
貴船の喉がごくりと鳴る。
「縄・・ですか」
「はい・・何かの儀式を行っているように
見えましたが、 どういった儀式だったのかまでは
申し訳ありませんが分かりませんでした」
「なるほど・・・」
貴船は腕を組み、考え込む。
すると銚子は、はっきりと言い切った。
「ですが、秋芳さんを拉致監禁したと
思われる犯人の目星はつきました」
「ほ、本当ですか!?」
思わず身を乗り出す貴船。
「それは一体、誰なんですか?」
御船は静かに目を閉じる。
「天という字と──」
わずかな間を置き、再び口を開く。
「縁という字が視えました」
「天・・縁?」
「はい・・これらを統合して考えると──」
銚子はゆっくりと断言した。
「この失踪事件には、天縁教団関係者が関与している
可能性が非常に高い・・という事になります」
その一言で、スタジオの空気が一変した。
誰も声を発しない。
スタッフたちも、観覧席も、カメラマンまでもが息を呑み、凍り付いたように立ち尽くしている。
静寂だけが広がる。
銚子は違和感を覚え、周囲を見回した。
(ん?どうしたんだろ?)
誰も動かない。
その時だった。
貴船がゆっくりと口を開く。
「て、天縁・・教団・・ですか・・」
御船は首を傾げる。
「ん?どうかされました?」
貴船は険しい表情のまま、御船を見つめた。
「御船さん・・それは──」
「え? なにか?」
銚子は不思議そうな表情を浮かべる。
◇ ◇ ◇
その頃、番組の副調整室は、張り詰めた空気に包まれていた。
灰皿には吸い殻が山のように積まれ、部屋には煙草の煙が霧のように漂っている。
モニター越しに映るスタジオに銚子が放った「天縁教団」という一言。
その瞬間、副調整室は騒然となった。
「て、天縁教団だと!?」
ディレクターの焦った声が響く。
信じられないものを見るような目でモニターを凝視し、思わず舌打ちを漏らした。
「チッ・・あの小娘・・・」
額には脂汗が滲み始める。
「生放送でなんて事
言ってくれちゃってんだよ・・」
みるみるうちに顔から血の気が引いていく。
青ざめた表情のまま、勢いよく立ち上がると怒号が飛んだ。
「おい!お前!すぐに切れ!」
スタッフたちが一斉に振り返る。
「CM行け!今すぐ!」
スイッチャーが戸惑いながら確認する。
「CMですか?」
「だからCMだよ! CM! CM! CM!」
それでも一瞬反応が遅れる。
ディレクターは机を拳で何度も叩きつけた。
ドンッ、ドンッ、と鈍い音が部屋中に響く。
「CM行けっつってんだ!
何度も言わせんな!」
怒鳴り声は止まらない。
「いいから早くしろ!殺されてーか!ぁあ?」
その一言で、副調整室の空気が凍り付いた。
スイッチャーは慌ててスイッチ卓へ手を伸ばす。
「は、はい!わかりました!」
次々とボタンが押され、映像はCMへ切り替わる。
「CM入ります!」
ディレクターの指示を受け、スタッフたちは慌ただしく動き回る。
そして数秒後。
「CM入りました」
その報告を聞くと、ディレクターは短く息を吐いた。
「ちょっと行ってくる」
「は、はい・・・」
返事を最後まで聞く事なく、ディレクターは火のついた煙草を灰皿へ乱暴に押し付ける。
ジュッ、と火が消える音が小さく響いた。
(あのクソガキが!)
苦々しく吐き捨てるように心の中で呟く。
次の瞬間には、副調整室の扉を勢いよく開け放ち、血相を変えたままスタジオへ向かって全力で駆け出していた。
#普通
野々さくら
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ありあ
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コメント
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×××さん、第258話読みました!めっちゃ緊迫感やばすぎて息止まった……!「天縁教団」って言葉が出た瞬間のスタジオの空気、副調整室のディレクターの焦り方、生々しくて鳥肌立ったよ😭💦 銚子ちゃんが無邪気に首かしげてるのが逆に怖い…続きが気になって仕方ない!