鋼谷は、霊一の最期の光景と当主の威圧的な言葉を引きずりながら、会社へと足を運んだ。彼の胸中には重い疲労と複雑な感情が渦巻いている。霊一の死は一報を入れなければならないが、その内容が自分にとってどれほどの重荷になるのか、彼自身もわからなかった。
受付を通り抜け、静かな廊下を歩きながら鋼谷はその場面を何度も思い返した。当主が放った冷たい一言が、耳から離れない。
重い気持ちで部屋に入ると、すでに上司たちが揃って待機していた。報告の場で鋼谷は、霊一の死亡とその経緯を淡々と語りながら、どこかで自分がこの世界で異質な存在になっていることを感じ始める。
「…以上が霊一の死の報告です。」
静寂が室内を包んだ。上司たちは一様に黙り込み、重苦しい空気が漂う。やがて、一人が鋼谷に質問を投げかけた。
「それで、鋼谷。今後、君はどうするつもりだ?」
その問いかけに鋼谷は一瞬言葉を失った。霊一の死や当主の宣言が、自分に何をもたらすのかまだ理解しきれていない。しかし、何かが変わったという確信だけはあった。
「……錆の都へ戻ります。やるべきことが、まだ残っていますから。」
鋼谷は決意を込めてそう言い放つと、部屋を後にし、再び錆の都へ向かう新幹線に乗り込んだ。都会を離れ、夜の闇を駆け抜ける車窓の景色を見つめながら、彼の中には新たな覚悟が静かに芽生えていた。
コメント
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こんな朝からすごすぎだろ!!