テラーノベル
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#グロ表現あり
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#バトル
#死に戻り
デラーに向かったトーペーは
失意とともに帰ってきた。
バフト・ハーンと丸二日議論を交わしたが、
「エスカミオ人など信用ならん!」
の一点張りだった。
「……もはや万策は尽きた」
絶望の表情を見せるトーペーに、
「俺の策、聞く?」
カルドは満面の笑みを浮かべた。
「こちらをご覧ください」
「親分、それやりたかっただけでしょう」
「いーじゃねーか。トーペーばっかりずるいだろ」
(子どもかよ……)
カルドは机の上の地図を指でたたいた。
「俺たちが、この反乱の本軍になればいいんだ」
「……なんだと?」
「デラーを中心に考えるから詰むんだよ。
あそこは寄り合い所帯だ。
疑いあって、命令もまともに通らねえ」
「だが、デラーを失えば反乱は」
「逆だ」
カルドは言い切った。
「みんながデラーにこだわるから、敵もそこに目を向ける。
だったら本当に叩くべきは別にある」
カルドの指が地図をすべった。
「ここだ。スーラトの北――ミヤーゴ城」
「補給路の結び目、沿岸との連絡拠点、
それに――ロバート・クライヴが入る可能性が高い」
トーペーの目が細くなる。
「クライヴを、狙うのか」
「殺す」
カルドはあっさりと言った。
「名将でも英雄でもねえ。
あいつがいるから敵は一つにまとまってる。
だから、首を落とす」
「そんなことができるのか?」
カルドはトーペーを見た。
「デラーで偉い連中に頭を下げ続けて、
何も決まらず潰されるくらいなら、
俺たちで戦を動かす」
トーペーはしばらく黙っていたが、やがて低く言った。
「……成功すれば、確かに反乱軍の目は一気にこちらへ向く」
「だろ?」
カルドは得意げに腕を組んだ。
「だから言ったろ。
俺たちが本軍になればいいんだって」
「ミヤーゴ城にラクシュミー・バーイーが出現しました」
「なんだと」
「ミヤーゴ城はスーラトの北、なんであんなところに」
ローズ卿はいぶかしんだ。
「まあ、陸戦では女子供に劣るたいしてあてにならん奴に任せるより
海に出てくれたほうが都合がよい」
クライヴはローズ卿を見下す態度をとった
「罠かもしれませんよ」
「そんなことだから女子供に負けるのだ」
「それよりお主、わしのことを本国政府に訴えるとはどういうことだ」
「?」
「まあ、何しようが、わしは痛くもかゆくもないがな
ただ、戦線から外れてもらうぞ、無能な味方ほど怖いものはないからな」
(ふん、お手並み拝見といこう、でもなぜ?)
ローズ卿はいぶかしんだ
「1つめ、敵の離間をさそう」
「ローズ卿はラクシュミーを苦しめられるほどの名将だ」
「ちょっとの間、寝ていてもらう」
カルドは悪戯そうに一本の指をたてた
「クライヴ様、これを」
「なんじゃ」
「秘密文書ではないかと」
「ん、これをどうした?」
「どうも例の港の貴族の一人が
こちらに内通したいと」
「だれだ?」
「マルコスとかで」
「まったくエンドア人も金で転ぶ、まあ意地汚いのはこちらの都合の良いことよ」
「内容は?」
ースーラトを燃やしてしまったったため
敵軍がミヤーゴ城を沿岸から上陸するだろう
そうなれば 防ぎようなく
負けてしまうとバロン・カルドは考えている
「まったく、バカな連中だ、自分たちで燃やしておいて
負けるきっかけをつくっている」
「2つ、マルコスをつかって
ミヤーゴ沿岸にクライヴを誘い込む」
カルドは指を二本立てた。
「この前見て気づいたんだよ」
「この地形――大軍を持ったやつはな、
必ず“囲みたくなる”」
「……囲む?」
トーペーが眉をひそめる。
「狭い湾、左右に丘、背後は森」
カルドは地図をなぞる。
「正面から押さえ、左右に展開して、
逃げ道をふさぐ――」
「名将ほど、そう考える」
「……それが罠か」
「そうだ」
カルドは笑った。
「囲んだつもりで、囲まれる」
「上陸した瞬間、後ろを焼く」
「丘に伏せた連中で左右を塞ぐ」
「正面は俺たちだ」
「大軍は逃げられねえ」
「指揮官は、必ず前に出る」
カルドは軽く言った。
「そこでクライヴを殺す」
カルドは指示を出した
「一番艦、俺とともに陸戦隊をミヤーゴ後方に運ぶ。
そのあとは戻って三番艦と合流、指示を待て」
「二番艦はケロンとともにミヤーゴ城のラクシュミー、
ククルースと合流――うって出ろ」
「三番艦は洋上で合図とともに沿岸の船を攻撃する」
一瞬の沈黙。
カルドは肩をすくめて言った。
「上陸した瞬間、逃げ場はなくなる」
「前はラクシュミー、後ろは俺、海は炎だ」
「……大軍でも、関係ねえよ」
トーペーは度肝を抜かれた
「あなたは」軍師なのですか?」
「いや、商人だよ」
「ほめられたことじゃねえが」
「これはな」
カルドは笑った。
「詐欺師が金持ちをカモにするときのやり方だ」
「でかい餌をぶら下げて――
自分から食いつかせる」
すてきな笑顔だった。
ロバート・クライヴは
戦艦10隻からなる大艦隊を組織すると
民衆に神格化されつつあるラクシュミー・バーイーと
ここ数か月煮え湯を飲まされ続けたバロン・カルドを
葬れると意気込んだ
沿岸から右翼左翼とも展開すると
上陸して陣を張った。
空は嵐を運んでくることを告げていた
「親分、こりゃひどい嵐ですぜ」
「やったな、勝ったな、これで」
「どういう神経してりゃそんなポジティブになれるんです?」
「船沈んじまうかもしれませんで」
「この前、海の女神にプロポーズしたんだよ」
「ありゃ俺に気があるな」
「……なんでそう思えるんです?」
カルドは空を見上げた。
「嵐の日に敵が囲もうとしてるんだ、うそみたい、神のご加護だろ」
「結婚式呼ぶよ、海の中だけど」
土砂降りの中、カルド艦隊も出港した
「あなたの大将っていつもあんな感じなの?」
前の嵐の海を見ながら
ミヤーゴ城を無血入城したラクシュミーはクスっと笑った。
ククルースは
「ええ、まあ」と答えながら
ここにきて初めてだなたぶん
この人が笑ったの
とラクシュミーの顔を覗き込んだ
(うちの親分はやっぱすげえな、でもなんでもてないのだろう)
本気で考えた
ケロン様到着しました。
「おう、来たか」
カルドは裏手に上陸すると
船を返し、山に登り森に到達した
嵐がやみ、日が昇り始めた。
カルドは低く言った。
「……始まるぞ」
その瞬間――
嵐がやみ、一夜明けると狭い湾内にひしめいていた
艦隊は洋上から攻撃に火の手が上がる
ラクシュミーもうって出て
クライヴ軍は初っ端から混乱の朝を迎えていた
命令は届かず、隊列は崩れた。
味方の船同士がぶつかり、怒号が飛び交う。
兵は我先に浜へと押し寄せたが、
船は嵐の余波で動かない。
兵は1人また1人と討たれていった
「このままでは脱出は不可能です。
お逃げください、スーラトまで逃げれば
船があるかもしれません」
「これは……」
クライヴは初めて理解した。
「囲まれているのは……我々か」
馬に飛び乗り、逃げ出す。
その背を、ラクシュミーが追った。
クライヴの顔が恐怖でゆがむ
――一閃。
首が飛んだ。
クライヴの首が転がる
今までの思いがあふれ
ラクシュミーはその場にひざまずき泣いた
討たれたものも多かったが
逃げ場のない砂浜に観念したのか
クレイヴ軍の多くは降伏した
後年、カルドはこの戦いを振り返り、笑いながらこう語った。
「ありゃあ、戦闘なんてほとんどなかったよ。
ラクシュミーにいいとこ全部持ってかれちまった」
「たしか勲章だか名誉何とかだかもらった気はするけどさ、
どこにしまったかも覚えてねえな」
少し間を置いて、カルドは肩をすくめる。
「俺がやったことなんて、大したもんじゃねえよ」
「でもな――」
「この日を境に、東エンドア会社は軍事的に崩壊したんだ」
東エンドア会社が、
軍事部門の総責任者と主力艦隊の大半を失ったという報せは、
瞬く間にエンドア全土を駆け巡った。
セポイの離脱、脱走、反乱はさらに加速し、
各地の港湾で起きる暴動を鎮圧できるだけの軍事力は、
もはや会社には残されていなかった。
反乱の主導権は、やがてマラヤー王国同盟へと移っていく。
だが、ここで大きな変事が起きる。
デラーで戦っていた反乱軍が敗北し、
皇帝は降伏を口にしたのだ。
これに猛反発したバフト・ハーンは皇帝と対立し、
ついには決裂する。
袂を分かったバフト・ハーンは、
マラヤー王国同盟への合流を決断した。
もともと皇帝は、
この反乱そのものに勝ち目は薄いと見ており、
積極的ではなかった。
その皇帝が降伏を選んだことで、
イヴァール帝国はついに滅亡した。
しかし、それでも火は消えなかった。
むしろ反乱軍の勢いは増す一方だった。
ラクシュミーとトーペーはジャンシーへ。
バフト・ハーンはデラーへ進軍する。
こうして戦いの舞台は海から内陸へと移り、
反乱は新たな局面に入った。
港は、戦いの前と変わらぬ顔をしていた。
だがその内側では、すべてが入れ替わりつつあった。
ナーナー王やトーペー、バフト・ハーンらは、
ひっきりなしに出入りを繰り返し、
各地の反乱軍との連絡に追われている。
カルドはナーナー王の要請を受け、
降伏した港へ次々と商会の人員を派遣していた。
カルド商会は現地人を雇い入れ、
気づけば交易は急速に拡大していた。
――戦争の裏で、すでに“次の支配”が始まっていた。
そんな折だった。
東エンドア会社の重鎮、
ジョブ・チャーノック
が、本国政府の役人を伴って港に現れた。
目的は一つ――
戦いを終わらせること。
チャーノックは役人たちを下がらせると、
ナーナー王に向き直り、静かに言った。
「カルド男爵と、2人きりで話がしたい」
室内に残ったのは、二人だけだった。
「本国政府は、この反乱のすべての責任を
東エンドア会社に押し付けるつもりだ」
チャーノックは、低く言った。
「我々からすべてを奪い、切り捨てる気だ」
一瞬の沈黙。
そして――
「助けてくれ、バロン・カルド」
カルドは鼻で笑う。
「どうやって。無理だろ」
「反乱軍は、君の言うことなら聞く。違うか?」
「……さあな」
「反乱を収めてくれれば、いくらでも出す。
権利でも、金でも――すべてだ」
カルドは即答した。
「だめだ。もうその段階は過ぎてる」
「本国に送還されて処刑されろ」
「もう決まっているんだろ」
チャーノックは苦笑した。
「同じエスカミオ人じゃないか。
あまりひどいことを言わないでくれ」
改めて設けられた正式な会談で、
ナーナー王は静かに口を開いた。
そして、条件を提示する。
「エスカミオ政府は、新政府エンドア帝国を承認すること」
「東エンドア会社の株式、五一パーセントを
カルド商会へ譲渡すること」
「さらに――」
「ウォーレン・ヘースティングズ、
ジョブ・チャーノック
両名は経営から退き、以後一切関与しないこと」
あまりにも一方的な条件だった。
だが――
チャーノックとエスカミオ政府は、
それを受け入れた。
迷いは、ほとんどなかった。
それだけ、追い詰められていたのだ。
反乱は終結した。
新生エンドア帝国は、ナーナー国王と宰相トーペーのもとに樹立され、
各地の藩王国も次々と復活していった。
ラクシュミーはジャンシーの新王とともに帰還する。
戦いは終わった。
――だが、カルドにはまだ仕事が残っていた。
東エンドア会社の“解体”である。
「親分、接収した食料、どうします?」
「戦争の迷惑料だ。全部配っちまえ」
「……それ、商売なんすか?」
カルドは笑った。
「商売なんだよ。配っちまえ」
戦争と飢饉で疲弊した民衆のあいだで、噂が広がる。
――エスカミオ人のバロン・カルドのもとへ行けば、食料が手に入る。
各地で暴動はなお続いていた。
だが一部の港町では、カルド商会を守るための自警団まで組織されたという。
「俺たちはな、儲けて税金を払う側の人間なんだよ」
「……なんで税金で金儲けするんだよ、おかしいだろ」
カルドは徴税システムそのものを、
人員ごと新政府へ譲り渡した。
「奴隷? なんでそんな効率の悪いことやってんだよ」
「お前、自分が奴隷だったら、
“今日も頑張ろう”なんて思えるか?」
「全部、証文燃やせ」
「仕事をあっせんして、住む場所を用意して、
家賃取れ。それで回る」
カルドは少し考え込み――
「……知らないだけか」
と呟いた。
宰相トーペーは、その様子を黙って見ていた。
(言っていることは無茶苦茶だが……)
(やっていることは、すべて理にかなっている)
ある日、珍しくカルドのほうから訪ねてきた。
「学校が作りたい」
トーペーは即座に首を振る。
「まだ復興の途中だ。金がない」
カルドは肩をすくめた。
「金か?」
そして、いつもの調子で言った。
「金はな――稼いで回すもんだ」
「蔵にためとくもんじゃねえよ」
すべてのカルド商会のそばに、
読み書きと計算を教える小さな学校が設けられた。
子供たちだけではない。
近所の主婦や港湾の労働者たちも、真剣な目で机に向かう。
やがて学校は夜間も開かれるようになった。
ときおり――
「カルド先生の特別講座」が開かれるらしい。
ある日。
一通の封筒に、カルドは目をとめた。
そして――
大きく目を見開いた。
「……大変だ!」
二階から駆け下りる。
「客が来る!」
「すぐに準備しろ!」
その日から、カルドは落ち着きを失った。
当日。
カルドは、かなり前から玄関口に立っていた。
隣には、港町時代からの古参、ジミー。
「なにも、こんな早くから待たなくても――」
「うるせえ。嫌なら帰れ」
「そんなこと言ってねえですよ……」
「――来た!」
遠くから、馬車が近づいてくる。
見覚えのある紋章の旗。
やがて止まり――
一人の少年が、二人の大人を従えて降りてきた。
「見えねえな。何が見える?」
カルドは目に涙を浮かべ
声は、わずかに震えていた。
ジミーは目を細める。
「あっし、あの丘の屋敷に何度か行ったことがありやす」
「あの方、普段はむっとして怖え顔なんですが――」
「笑うと、なかなか愛嬌がありましてね」
「……ほら、目元なんて、そっくりだ」
少年は、まっすぐ歩いてくる。
そして、丁寧に一礼した。
「はじめまして。リチャードと申します」
「カルド男爵にお会いできて光栄です」
「本日は母の言いつけで、父の手紙をお届けに参りました」
カルドは、しばらく言葉を失った。
それから、ようやく口を開く。
「……遠路、大変でしたな」
「おいくつになられました?」
「十一になりました」
カルドは、かすかに笑った。
「そうですか」
「私があなたのお父上に初めてお会いしたのも――」
「同じ十一のときでした」
「海の見える港の丘で」
「……どうぞ、中へ」
カルドは、涙を拭こうともしなかった。
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