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#普通
野々さくら
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ありあ
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絹の話を聞いた一同は、あまりの内容に言葉を失う。
「ひ、ひでー話じゃねーかよ・・・」
焔垂が思わず漏らした一言が、店内に重く沈んだ空気を代弁していた。
信愛は何も言えず、ただ静かに絹を見つめる。
その隣で、さくらも呆れたように肩を落とした。
「や、やばいヤツじゃん・・・」
絹は力なく目を伏せる。
「それから私は、生きる希望を失ったわ」
その声には、当時の絶望が今も色濃く滲んでいた。
「けど、やっぱり朝陽の事を諦めきれなかった」
絹はゆっくりと言葉を続ける。
「だからまるでストーカーのように
遠くから朝陽を見つめる事しか出来なかった」
愛する息子に近づくことも、声をかけることも許されない。
ただ遠くから、その成長を見守るだけの日々。
「今更私から何言われても
朝陽の耳には届かない」
寂しげに微笑みながら、絹は続けた。
「姉に嘘を吹き込まれたせいで
朝陽は私を恨んでるはずだから」
沈黙が流れる。
やがて信愛が静かに口を開いた。
「本当にそうでしょうか?」
絹はゆっくりと顔を上げる。
「え?」
信愛は真っ直ぐ絹を見つめた。
「朝陽くんが最初、女性の声に悩んでる
って私たちに相談しに来た時」
当時のやり取りを思い返すように目を細める。
「『女性の声を聞くと心が休まる気がする』
『優しく抱きしめられてる様な気分になる』
そう言ってたんです・・・」
その言葉に、絹の瞳が揺れた。
「朝陽が・・そんな事を?」
信愛は静かに頷く。
「もしかしたら声から、絹さんの愛情と温もりを
無意識に感じ取っていたんじゃないでしょうか?」
絹は言葉を失う。
信愛はさらに続けた。
「浦添くんが本当に、お姉さんの
嘘を鵜呑みにしていたとしたら
そんな気分にはならないんじゃないか
って思うんですよね」
その言葉は、長年絹の心を縛り続けていた思い込みを、少しずつ解きほぐしていくようだった。
「逮捕されて以来、浦添くんとは
会われてないんですよね?」
「ええ・・一度も会ってないわ」
絹は小さく頷く。
信愛は優しく微笑んだ。
「会ってみませんか?」
絹は不安そうに視線を落とす。
「でも・・・拒否されたらと思うと」
その時、茜が何かを思い出したように口を開いた。
「茜・・絹さんにあの写真見せてあげて」
「オッケ〜♬」
茜は軽く返事をすると、スマホを取り出して画面を操作し始める。
絹は首を傾げる。
「あの写真?」
信愛は穏やかに微笑んだ。
「それを見れば浦添くんがどう思ってるか
その答えが見つかるはずです」
絹は息を呑み、小さく呟いた。
(答えが見つかるってどういう意味?)
首を傾げる絹に、茜はスマホをそっと差し出した。
「これです」
絹は疑問に思いながらも茜からスマホを受け取り、画面を見る。
そしての瞬間。絹の目からは、大粒の涙が堰を切ったように溢れ出した。
「!!!!!!」
震える手で画面を見つめる。
そこには、幼い朝陽と寄り添い、幸せそうに笑う自分の姿が映っていた。
「こ、この写真って・・・ぐすっ」
信愛は静かに問いかける。
「それって昔の絹さんと、浦添くんの写真ですよね?」
「ええ・・・そうよ」
涙を拭うことも忘れたまま、絹は小さく頷く。
「でも、なぜこの写真を貴方達が持ってるの?」
信愛は優しく微笑んだ。
「その写真、浦添くんが持ってた写真なんですよ」
「え!?朝陽が!?」
絹の瞳が大きく見開かれる。
信愛は続けた。
「本に挟んで後生大事に持ってたみたいです」
「朝陽が・・ずっと・・これを・・ぐすっ」
絹は言葉を詰まらせる。
その時、茜が穏やかな口調で付け加えた。
「少なくとも10年以上前の
写真のはずなのに、シワもほとんど無くて」
それは大切に扱われてきた証だった。
茜は優しく微笑む。
「相当大事にしてたんですね、朝陽くんは」
「朝陽・・・」
絹は写真に映る幼い朝陽の頭を撫でるように、そっとスマホの画面へ指先を添えた。
信愛が静かに問いかける。
「これでも浦添くんから拒絶されるかもしれない
そう思いますか?」
絹はしばらく黙っていた。
長い沈黙の末、小さく息を吐く。
その時、さくらが優しく背中を押した。
「会ってあげて下さいよ」
続いて焔垂も力強く頷く。
「浦添くんだって会いたいはずです
絹さんだってそうでしょ?
だったら迷う理由はないですよね?
互いが互いを求めてるんですから」
その言葉は、長年絹を縛り続けてきた恐怖を少しずつ溶かしていく。
絹はゆっくりと顔を上げた。
「そうね・・・」
そして、涙を浮かべながら微笑む。
「会いたいわ・・・ 朝陽に会って謝って──」
震える声で続ける。
「抱きしめたい・・・」
信愛は安心したように微笑んだ。
「なら私たちが協力します」
そう言って振り返る。
「ね?みんな!」
さくらは胸を張って笑った。
「あったり前っしょ」
茜も明るく親指を立てる。
「と〜ぜんっ♬」
仲間たちの温かな言葉に包まれ、絹は胸に手を当てる。
「ありがとう・・本当にありがとう」
涙で濡れた頬に笑みが浮かぶ。
コメント
1件
×××さん、今回もめっちゃ胸にくる話でした…… 絹さんがずっと遠くから朝陽を見守るしかなかった日々、信愛ちゃんの「会ってみませんか?」って優しい問いかけ、そして何より、朝陽くんがあの写真を10年以上も大事に持ってたって事実——もう涙が止まらなかったです。お互いがお互いを求めてるって焔垂くんが言った言葉、その通りだなって思いました。 次、親子が会えるのかな……ちゃんと心が通じ合いますようにって祈る気持ちで続き待ってます🥀