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ポン酢さんのおかげで自分もtr受けに興味出てきました!! ほんとに次が楽しみすぎます!! いつも出すの早くてありがたいです。お疲れ様です🧏🏽♀️
みんなでゲームをしていた時、ぺいんとがトラゾーと通話を分けてほしいと言ってきた。
2人が一旦抜けた後、ゲームをポーズ画面にして手を止める。
不確定なものが確証になり、確定となった時に俺はトラゾーに何をするか分からない。
「(泣かせたくないのに。…傷付けて、泣かせるかもしれない…)」
その思考を振り払う為にゲーム内に残された俺としにがみくんは雑談をすることにした。
『クロノアさん、トラゾーさんと何かあったんですか』
俺らも話してようかと言った途端に切り出してきた。
しにがみくんらしいけど。
「…いきなりだね……いや、うん…。俺にもさっぱり。…急に余所余所しくなったって言うか、避けられてると言うか…」
『トラゾーさんが?…クロノアさん、あの人に何したんです?』
『特に、何かした記憶はないんだけどな…』
思えば、トラゾーにプロポーズをした辺りから彼の様子が変になっていた。
『まぁ、あなたたちはちゃんとお互いのこと尊重しあってますし、クロノアさんに限ってトラゾーさんの嫌がることはしないと思いますけど…』
「ねぇしにがみくん」
『はい?』
今の自分の思ってることを言ってもいいだろうか。
吐き出さなければ、取り返しのつかないことをしてしまいそうになる。
『…大丈夫、ここで聞いたことは誰にも言いませんよ。だから、どうぞ話してください。クロノアさんの気が楽になるなら』
「……ありがと」
『僕はいつだってみんなの味方ですからね!』
満面の笑みを浮かべてるのが見なくても分かる。
「……俺、トラゾーにプロポーズしたんだ」
『あぁ…ぺいんとさんが言ってましたね。…それで、どうしたんです?』
「タイミングも悪かったのかもしんないけど、なんか曖昧な返事されて、そっからなんか他人行儀?みたいな、…何だか、俺以外に好きな人がいるみたいな態度とられて…」
『あのトラゾーさんが⁈あり得ませんよ!あの人そういう不誠実なことを嫌いでしょ?仮にクロノアさん以外の人を好きになってたとしたらきちんとあなたに話をするでしょう?』
「確かに…」
『それに、曖昧な返事をするくらいならその場で断るか考える猶予を下さいとかちゃんと言うでしょ』
トラゾーは真面目が服を着たような性格だ。
しにがみくんにそう言われて疑心暗鬼になりすぎてたかと恥ずかしくなる。
俺が疑えば彼の心は離れていく。
『それにトラゾーさんはちゃんと謝罪をする人ですよ。逃げずにごめんなさいって』
「うん」
『人生最大の選択ですからね、いつも冷静なクロノアさんもやっぱり焦ってるんですよ』
「そうかな…」
『と、言うよりあなたは逃げようとするトラゾーさんとっ捕まえる人でしょ?僕もぺいんとさんも、あなたがめっちゃ重い人って分かってますから』
「……貶してる?」
自覚はあるけど人に言われるのはなんか複雑だ。
『それだけトラゾーさんのことが好きってことですよ』
「…うん、そりゃ誰よりもね。渡したくないもん」
『去る者追わずっぽい顔してるのに、逃げる者は果てまで追いかける人ですよ、クロノアさんはトラゾーさん限定で』
「当たり前だよ。絶対に、離したくないから」
そこでポロンと音がして2人がゲームに戻ってきた。
「(トラゾーだけだよ。他の人でこんなんなったことない)」
逃げるトラゾーを俺はきっとそのまま見逃したりはしない。
追い詰めて、逃さないと思う。
いや、逃さない。
しにがみくんの言った通りだ。
俺はみんなが思ってる以上に重いし優しい人間じゃない。
「(逃して、あげられないんだよな…)」
そんなことを考えながらゲームを再開する。
ぺいんとと何を話していたかは分からないけど、トラゾーは動揺して気持ちを表してるかのようにゲームプレイが悲惨なものになっていた。
───────────────、
トラゾーは友達が多い。
アクティビティ溢れてるからその人たちと出かけることもよくある。
だからといって特定の人物に会ってるとかそういうのは全くなかった。
これは色んな人に協力してもらい、自分の目でも確認したから確実だ。
「…誰かと会ってる様子はない」
隠し事は決して上手ではない。
そんなトラゾーが俺らに、ましてや俺に何かを隠すことなんてない。
本人も隠し事はないと言っていた。
なら、何故俺を避けようとしているのか。
絶妙な距離の取り方にそろそろ抑えている感情が溢れそうで。
「………いや、ダメだ。問い詰めることなんてできない」
溜息をついて立ち上がる。
「でも、手っ取り早く聞いた方がいいのかもしれない」
遠回しに聞かれるより、単刀直入に聞いた方がトラゾーも言いやすいだろうし俺も諦めがつく。
と、思う。
「(諦めはしないだろうけど…)」
ただ、妙な胸騒ぎがしてトラゾーに電話をかけた。
なのに、いつまで経っても出られることはなく。
5分以上コールの音だけが耳に響く。
「いつもなら、よっぽどのことがない限りすぐに出るのに…」
電話に出られない状況なのか。
意図的に出なかったのか。
電話を切り、スマホを握る手に力が込もる。
「……トラゾー、やっぱり俺から離れようとしてる?……そんなの、…」
そこで首を横に振る。
自分に縛り付けておきたいわけじゃない。
彼の意思は彼の自由だ。
そこに俺の勝手を押し付けちゃいけない。
「そう、思うのに…許せない…」
こんなに自分勝手な部分があるなんて思わなかった。
プロポーズしたのだって俺自身が安心したいからなのかもしれない。
他人のところへ行かないという、誰の手にも渡らないという。
しにがみくんの言う通り焦ってるのかもしれない。
「……トラゾーはモノじゃない」
どこまでも矛盾した感情を抱いて、安心したい利己的な思いをぶつけそうになる。
ぺいんとの言ってた既成事実。
そんなことしないと否定していたのに、そんなことで安心なんてしたくないのに。
「…俺のモノにしてしまいたい」
愛だの恋だのは人を狂わせる。
そんなことを聞いた気がする。
「………」
好きだよ、誰よりも。
俺と一緒にいて欲しい。
そうトラゾーに言った。
彼がどういう意味でとったのかは分からない。
きょとんとしたあと首を傾げて、はい、俺も、と返事をした。
多分、伝わってねぇなと思ってたけど、想像以上に伝わってなかったようだ。
「俺らしくないな…」
自分の顔を叩いて思考を払う。
これ以上ことが拗れる前にどうにかしなければ。
ちゃんと話をしよう、そしてきちんと伝えよう。
俺の想いを。