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「おい、起きろ。」
「んーっ、もう7時?。」
そう言いながら、隣でタバコを吸う彼を見上げる。
「ほら、早くしろよ。あいつらくる前に送る。」
はーい、と返事してベッドから起き上がり服を着る。彼とはただ肌を重ねるだけの関係。もう2年になる。お互いに特定のパートナーはいないし、いたとしてもどうでもいい。それくらい、私たちはあっさりしている関係だ。
彼に送られて家に着き、バッグに手を突っ込んで鍵を探し、鍵穴にさす。そのままガチャリとドアノブを回して中へと入る。そのままベランダに出て、ふぅーとタバコの煙を吐く。いつからだろう、タバコを吸うようになったのは。いつからだろう、こんなふうになってしまったのは。タバコを灰皿がわりにしている猫柄の皿に押し当てて、部屋に戻る。特にやることもなく、ソファに沈みスマホを見る。
ピンポーン
はーい、と返事してドアを開ける。
こちらお荷物です。と配達のお兄さんから受け取り、差出人の名前はないが気にせずソファに戻り中を開く。僕の可愛い子へ、と手紙が1番上に入れられている。その手紙を開いてみると、5つ歳上の幼馴染からのものであった。手紙には、海外からこちらに戻る旨が書いてあり、私に会いたいという内容のようだ。
来週の水曜日、夜7時に僕たちがよく会っていた青い屋根のカフェで君を待つ。来てくれると信じているよ。
そんな手紙のほかには、黒バラの花束が入っている。黒バラも結構綺麗なんだなぁと思いながら花瓶に水を入れて花を生ける。
とうとう水曜日になり、どうするか迷ったものの特に彼と会って不利益もないために、適当な服を着てカフェに向かう。内心ドキドキしながらカフェの扉を開けて、中を見渡す。隅の1席で、コーヒーを飲みながら少し緊張気味な彼がいた。
「えっと、久しぶり」
遠慮がちに彼に声をかけると、彼はみるみるうちに笑顔になり立ち上がって、興奮気味に私の手を両手で包む。
「会いたかった、僕の可愛い子」
彼は昔と変わらず私のことをそう呼び、幸せそうに微笑んで頬に手を添えてくる。
「こ、ここ、お店だから」
「ごめんね、あまりに君が美しくなっていて触りたくなったんだ」
と相変わらず甘い言葉を囁く。でも、どうしてだろうか、彼の声や笑顔、しぐさにドキドキしてしまう自分がいる。
「そんなわけない、髪もこんなんだし、ピアスだって舌まで開いてるんだよ。それにお兄の方がもっとかっこよくなった…」
柄にもなく、少し照れてしまい小さい声でそう言う。すると彼は、一瞬驚いたような顔をしてからまたいつものように微笑む。
「そんなことないよ、君はどんな姿でも僕の君だよ。本当に綺麗になったと思ってる。もちろん前も可愛かったよ。まだお兄って呼んでくれるんだね、嬉しいよ。」
彼は本当に嬉しそうに笑って、綺麗な銀髪を揺らす。そうしてしばらくカフェで話してから、会計を済まして外に出る。二人で並んで夜の道を歩く。
「ねぇ、手紙とバラありがとうね」
「君のためなら何でも送るよ。あの黒バラの意味わかってる?」
「え?意味なんか花にあるの?」
そういうと彼は困ったように笑ってから、私の頭を撫でる。
「ハハ、君はそう言う子だったね。なんでもないよ、あの花はただ綺麗だと思って送ったんだ」
そんな話をしながら二人で夜道を歩き、チラッと彼を横目で見ると明らかに自分より大きく、そして前より男性らしい体つきになっている。あの細かったお兄がここまで筋肉質になるなんて、と考えていると彼と目が合い、スッと目を逸らす。
「僕の可愛い子、どうかしたのかな?」
「あ、う、ううん、そのお兄、あんなに細かったのになと思って」
「ハハ、そうだね、君の隣に立っても恥ずかしくないように努力したんだよ」
彼はそんな恥ずかしいこともさらっと言ってくるため、こちらが恥ずかしくなってしまう。
「は、はいはい。そう言うこと言うのやめてよね、子供じゃないんだから」
つい強気な態度で誤魔化してしまう。しかし、そんな私を彼は優しく微笑んで、そうだねと言ってくれる。
「ありがとう、送ってくれて」
「いいんだよ。君のためなら何でもしたいからね。また会えるかな?これ僕の電話番号、連絡してくれないかい?」
彼のメモを受け取り、彼を見送る。彼のメモを見つめたままソファに沈む。お兄、かっこよかったな。ハッとして口を押さえる。自分でも無意識に言葉が口をついて出てしまった。何言ってんだと思いながら頭をブンブンと振り、その勢いで熱めのシャワーを頭からかぶる。しばらくしてから浴室から出て、髪も乾かさないままベッドに身を投げて目を閉じる。