コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
第29話:未確認敵国条約の発表
政府の発表
大和国中央広場。
巨大スクリーンに「未確認敵国条約 発表式典」と映し出される。
銀と緑の制服をまとった国軍の将校が壇上に立ち、硬い声で宣言した。
「未確認大陸国家の脅威に対抗するため、大和国は世界に先駆けて防衛条約を結びました!」
背後には赤く塗られた大陸の映像。軍事パレードや砲撃のCGが繰り返し流れ、市民は一斉に息を呑んだ。
「この条約により、各国は大和国の旗の下で守られるのです」
群衆の間から歓声が上がった。
「ありがとう大和国!」「やっぱり頼れるのはここだけ!」
市民の反応
配信画面の前。
まひろは水色のパーカーにハーフパンツ。膝を抱えて座り、真剣な瞳で語った。
「ねぇミウおねえちゃん……ほんとに条約で守られるのかな。
ぼく、あの映像を見てからずっと夢に出てくるんだ。赤い大陸のこと」
ミウは濃いグリーンのブラウスにベージュのスカート。首元に小さなパールのネックレスをつけ、柔らかな笑みを浮かべる。
「え〜♡ 大丈夫だよ。だって条約って“平和の約束”なんだもん。
大和国が先に結んだから、他の国も安心して編入できるんだよねぇ♡」
コメント欄には「すごい!」「私の国も守ってほしい」「やっぱり条約は必要」の声が並んだ。
裏の操作
暗い作戦室。
緑のフーディをかぶった Z(ゼイド) が端末を操作していた。
モニターには、AIで生成された「未確認大陸」の兵器映像。
本当は存在しない敵が、あたかも現実にあるかのように世界中へ配信されていた。
Zは口元に笑みを浮かべた。
「恐怖を作り出すだけで、条約は成立する。
未確認であるほど、人は信じてしまうんだ」
結末
式典会場。
翡翠の旗が風にはためき、群衆はその緑丸を見上げて唱和した。
「大和国に感謝します!」
無垢な問いとふんわり同意、その裏で「未確認敵国条約」は世界に受け入れられ、
人々は存在しない大陸に怯えながらも、大和国の平和を求めて集まっていった。