コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
第30話:国際展示会
幕開け
大和国中央ドーム。
「未来技術国際展示会」と大きな看板が掲げられ、各国の代表団やメディアが集まっていた。
ミウは淡いラベンダー色のワンピースにイヤリングを揺らしながら、ふんわりと壇上に立った。
その隣には子どもの姿のまひろ。水色のシャツに短パン姿、無垢な笑顔でカメラを見つめていた。
「え〜♡ 今日は“大和国が今持っている技術”を、世界のみなさんにご紹介しますねぇ♡」
展示された技術
監視AIカメラシステム
街頭や家庭に設置されたカメラの映像を、AIが自動解析。
「犯罪予測」「市民ランク自動判定」として紹介されたが、実態は市民の行動監視そのものだった。
ヤマトコイン決済網
スマホをかざすだけで食料や交通が利用できる。
展示会では「世界最速の電子通貨」とアピールされたが、裏では全ての購入履歴がネット軍に記録されていた。
電波ジャック技術
ミサイルやドローンの電波を奪う技術を「災害時の救助支援システム」として披露。
実際には兵器制御の奪取が可能であることを、国外の人々は知らない。
食品培養装置
人工培養肉や野菜を「未来の食糧危機対策」として試食提供。
来場者は「本物と変わらない!」と驚いたが、裏ではコストが高すぎて国民の食卓には回っていなかった。
会場の熱狂
各国の代表は目を輝かせた。
「これが平和の技術か」
「人類の未来を導く国だ」
記者たちは一斉に写真を撮り、SNSには「大和国こそ次のリーダー」という言葉が並んだ。
裏側
展示会場の裏で、国軍の役人が小声で話す。
「見せているのは“市民用”に調整した一部だけだ。
本来の機能を知られたら、各国は震え上がるだろう」
ネット軍の隊員は頷きながら来場者の通信端末を解析し、外交官や記者たちの個人データを収集していた。
結末
夜。ニュースは一斉に報じた。
「未来を実装する国、大和国」
「国際展示会で世界を魅了」
暗い部屋でZが緑のフーディを羽織り、映像を見つめながら笑う。
「未来なんていらない。
“いま持っているもの”を、未来のように飾ればいい。
それだけで人は大和国にひざまずく」