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スタートヽ(*^ω^*)ノ




ガラス越しの景色が、ほんの少しだけ揺れて見えた。

レトルトは気づかないふりをした。

瞳の奥がじんわりと滲むこの気持ちを

どうしていいのか分からなかった。


そのときだった。


「いらっしゃいませ〜、そのカニさん、人気なんですよ」

店員の明るい声がレトルトの耳にも届いた。


キヨは、少し恥ずかしそうに笑った。

けれど、どこか嬉しさを隠しきれないような、そんな優しい笑顔で――


『実は、好きな人がこのキャラクター好で。』

「えっ、素敵〜!プレゼントですか?」

『はい////大事な人なんです。』


キヨの指が、カニのぬいぐるみのふわふわのハサミを撫でる。

その指先に込められた想いが、痛いほど伝わってくる。


『会えるか分かんないんですけど、せめて、これだけでも渡したいなって、、、』


その言葉に、レトルトの胸の奥がズキリと痛んだ。


キヨくをはずっと、あの日から、想ってくれていたんや――。

ずっと、自分のことを。


レトルトは、ガラスの外で小さく身をすくめた。

逃げ出したい気持ちと、今すぐ抱きしめたい気持ちが、心の中で渦を巻いていた。


声をかけたい。でも怖い。

こんな自分で、ほんまにあの子を幸せにできるんか?

対人恐怖症で、引きこもってばかりの自分なんかが――…。


でも。


キヨのその言葉が、あまりにもまっすぐで。

あまりにも、あたたかくて。

逃げた背中を、ぎゅっと掴まれたようだった。


(このまま終わっていいの?)


心の奥で、自分に問いかけた。


キヨの笑顔が、ぬいぐるみを見つめるその眼差しが、まるでレトルトそのものを包み込んでいるように見えて――


レトルトは、ほんの少し、ほんの一歩だけ。


ガラス戸の方へと、足を踏み出していた。




つづく



俺の彼氏はAIくん

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