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放課後――
校門の少し離れた場所
知枝「……」(腕時計を見る)
(この時間帯か……)
スーツ姿のまま、静かに立っている
知枝「……来るわけがない」(小さく呟く)
(今日は休むように言った)
(あの状態なら、普通は――)
それでも
視線は、無意識に校門へ向いている
知枝「……私も、らしくないな」
その時――
校門から出てくる人影
知枝「……」(ふと目を細める)
見覚えのある長身
少しラフな歩き方
知枝「……まさか……」
川合 愛空
知枝「……」
(なぜ、いる)
(休んでいないのか……?)
わずかに眉をひそめる
(無理をするなと、言ったはずだが)
その時――
愛空がこちらに気づきかける
愛空「……っ」(ピタッと止まる)
(まずい……見られた……?)
知枝「……」(目が合いそうになる)
ほんの一瞬
愛空「……」(サッと視線を逸らす)
(やば……どうする……)
愛空は、そっと物陰に隠れようとする
知枝「……?」(違和感)
(今、避けた……?)
だが――
次の瞬間
友達「おーい川合!何してんだよ!」
愛空「っ!?」
ガシッ
後ろから勢いよく肩を組まれる
友達「帰ろーぜ!今日さ――」
愛空「ちょ、ちょっと待てって!」
友達「え?なに?」
愛空「いや、なんでも……」(ちらっと視線を向ける)
知枝「……」(しっかり見ている)
愛空「……っ」(固まる)
(終わった……)
友達「てかお前さっきから挙動おかしくね?」
愛空「いや普通っすよ!?」
(全然普通じゃねぇ……!)
楽しそうに笑う友達
無邪気な空気
だが
知枝「……」
その様子を、静かに見ている
(……元気そうだな)
ほんの少しだけ、安堵
だが同時に
(……楽しそうだ)
(当然か……同年代だ)
知枝「……」
胸の奥に、わずかな違和感
知枝「……帰るか」(小さく呟く)
踵を返そうとする
その時――
愛空「……ちょっとトイレ!」
友達「は?今?」
愛空「すぐ戻る!」
バッと肩を外して走り出す
友達「おい川合ー!?」
人気の少ない場所
愛空「……っは……っは……」(息を切らしながら)
(来ちまった……)
視線の先
まだそこにいる
知枝「……」(静かに立っている)
愛空「……ちとせさん……」
知枝「……愛空さん」
一瞬の沈黙
知枝「……学校は休むのでは?」(少し低い声)
愛空「……あー……その……」
愛空「……大丈夫だったんで……」
知枝「……そうですか」
短い返事
少しだけ冷たい
愛空「……」
(あ、これ怒ってるやつ……)
愛空「……すんません……」
知枝「……謝る必要はありません」
知枝「ただ――」
一歩、近づく
知枝「無理はするなと言ったはずです」
愛空「……はい……」
(近……やっぱ近い……)
知枝「……ですが」
知枝「元気そうで安心しました」(少しだけ柔らかく)
愛空「……」
(……ずる)
愛空「……ちとせさんこそ……なんでここに……」
知枝「……」
少し間を置く
知枝「……通りがかりです」
愛空「……絶対嘘っすよね……」
知枝「……さて、どうでしょう」
愛空「……またそれ……」(少し笑う)
沈黙
さっきまでの友達との空気とは違う
静かで、近い距離
愛空「……」
(なんか……こっちの方が落ち着く……)
知枝「……友人が待っているのでは?」
愛空「……あー……まぁ……」
でも
動かない
知枝「……行かなくていいんですか」
愛空「……」
愛空「……もうちょい……いいっすか……」
知枝「……」
知枝「……少しだけですよ」
愛空「……っすよね」(ちょっと嬉しそうに笑う)
知枝「……」(その表情を見る)
(……本当に)
知枝「……困った人だ……」(小さく)
だが
その場を離れようとはしなかった
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