第4話 未体験、飢える前に……

私はトランプをとりあえず食べてみた。やはりプラスチックの味しかしない。だがオセロとは違い、少し柔らかかった。醤油をかけてみた。プラスチックと醤油の味がする。その後もたくさんの調味料で試してみたが、どれも合う。砂糖なら甘くなるし、胡椒ならちょっぴり辛くなるし。やはり万能な食材だ。いや、本当は食材では無いが。

もうここまで来たら何でも食べられる気がしてきて、カゴやボーリングのピン、輪ゴムや布を食べてみた。味はあまり無いが、独特な味が若干する。お世辞にも美味しいとは言えないものもたくさんあった。

食事を終えると水をコップ一杯飲み、ソファーに寝転がった。今までの生活の方が勿論良かったが、これはこれで楽しいかもしれない。でもいつか食料不足が無くなって現状が打破されればいいのに、といつも思う。もしその時に私が生きていたらなぜ生きていたかをインタビューで答え、私は一躍有名人……なんて妄想もする。だから私は「その時」まで必死に耐えようとしている。