テラーノベル
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夏休みが明けて、学校にはまた騒がしい日常が戻ってきた。
でも、図書室にいる私の前には、最近ミナトじゃない「別の人」がよく現れるようになった。
ユウキ:「キララさん、またその本読んでるの? 趣味、渋いよね」
隣のクラスのユウキくん。成績優秀で、私と同じデザイン系の大学を目指している男の子。
キララ:「あ、ユウキくん。……うん、この資料、すごく分かりやすくて。ユウキくんこそ、デッサンの練習は?」
ユウキ:「今終わったところ。ねえ、良かったらこの後、駅前の画材屋まで付き合ってくれない? 新しい筆を選びたいんだけど、キララさんのセンスを信じてるからさ」
キララ:「え、私のセンス? そんなの……」
そう言いかけた時、図書室のドアが「ガラッ!!」と勢いよく開いた。
ミナト:「(肩で息をしながら)……おい、キララ! 帰るぞ!」
現れたのは、部活終わりのミナトだった。でも、いつもと違って顔がすごく怖い。
キララ:「ミナト? まだ図書室の当番残ってるんだけど……」
ミナト:「(ユウキをじろっと睨んで)そんなのいいから。ほら、早くしろよ。……っていうか、誰だよ、そいつ」
ユウキ:「(余裕の笑顔で)ミナトくんだっけ? サッカー部の。僕はユウキ。今、キララさんと放課後の約束をしてたところなんだけど」
ミナト:「(一歩前に出て)約束? そんなの聞いてねーよ。キララ、行くぞ。母ちゃんが、今日はお前の大好物のハンバーグ作るから寄ってけって言ってたんだからな!」
キララ:「えっ、おばさんが!? ……でも、ユウキくんとの約束も……」
ミナト:「(私の手首を掴んで)いいから来い! ほら!」
ミナトは強引に私を連れ出した。図書室を出て、誰もいない廊下を早歩きで進んでいく。
キララ:「ちょっと、ミナト! 痛いよ! なんでそんなに怒ってるの?」
ミナト:「(ピタッと止まって、振り返らずに)……怒ってねーよ」
キララ:「嘘。顔、真っ赤だよ」
ミナト:「(低い声で)……あいつ、お前と同じ大学行くんだろ? 趣味も合うんだろ? ……俺みたいにサッカーしか脳がない奴より、あいつと一緒にいた方が楽しいんじゃねーのって思っただけだよ!」
キララ:「……それって、嫉妬?」
ミナト:「(カッとなって振り返って)ああ、そうだよ! 悪いかよ! お前が他の男と楽しそうに喋ってるの、見てらんねーんだよ!」
夕暮れの廊下。ミナトの叫び声が響く。
私は驚いて固まってしまったが、ミナトの言葉の意外さに少し心が揺れた。
キララ:「……バカだね、ミナトは」
ミナト:「……うるせーよ」
嫉妬するミナトなんて初めて見たけど、それは私にとって、どんな甘い言葉よりも彼の意外な一面を知るきっかけとなった。
つづく
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