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衝撃の再会はるの心臓がドクンと音を立てた。保健室に入ってきたのは、いつも自分をからかい、傷つけてきた同級生たちだった。彼らのニヤニヤとした顔を見た瞬間、はるの体はこわばり、また吐き気がこみ上げてきた。
「なんだよ、まだ寝てんのかよ。仮病だろ、仮病。」
「うっわ、顔色悪っ。本当に吐いてんじゃん。」
心ない言葉がはるの耳に突き刺さる。彼らははるの近くに寄ってきて、好奇の目で覗き込んだ。はるは恐怖で体が震え、目を閉じて必死に耐える。影山先生はどこにいるんだろう。早く来て、助けてほしい。はるの心は叫んでいた。
先生の登場と状況の打破
その時、ドアの向こうから慌ただしい足音が聞こえ、保健室に影山先生が飛び込んできた。先生は一目ではるの状況と、そこにいる生徒たちの様子を察した。
「君たち、ここで何をしているんだ!はるは体調が悪いんだぞ。すぐにここから出なさい!」
先生の鋭い声に、いじめていた生徒たちはびくりと肩を震わせた。彼らは先生の剣幕に怯え、すごすごと保健室を出ていった。
先生はすぐに近寄ってきて、はるの顔色を心配そうに覗き込んだ。
「はる、大丈夫か?辛かったな。もう大丈夫だ。」
先生の優しい声とはるの背中をさする温かい手に、はるは安心し、張り詰めていた気持ちが一気に緩んだ。再び吐き気がこみ上げ、はるは先生の腕の中で、我慢していたものをすべて吐き出してしまった。
先生は嫌な顔一つせず、ただ黙ってはるの背中をさすり続けてくれた。その温かさに、はるは心の底から救われる思いだった。体調の悪化と先生の献身
いじめっ子たちが去った後も、はるの体調は悪化する一方だった。影山先生が背中をさすってくれる中、はるは何度も、何度も吐き続けた。胃液しか出なくなり、喉はヒリヒリと痛む。体中から力が抜け、意識が遠のきそうになる。
先生は、そんなはるの体をしっかりと支え、決して離れようとしなかった。濡れたタオルで額を拭き、冷たい水を少しずつ飲ませてくれる。
「はる、辛いな。でも、大丈夫。先生がそばにいるからな。」
先生の声は、優しく、そして力強かった。はるは意識が朦朧とする中でも、その声だけはしっかりと聞き取ることができた。先生の温かい手が背中をさするたびに、少しだけ痛みが和らぐような気がした。
夕暮れから夜になり、保健室には静寂が訪れた。しかし、はるの嘔吐は止まらなかった。影山先生は、一晩中ほとんど眠らずにはるの看病を続けた。はるが苦しそうにうめき声を上げるたびに、すぐにそばに駆け寄り、体を起こして背中をさする。
先生の決断と親への連絡
夜が深まるにつれて、はるの呼吸は浅くなり、呼びかけにも反応しなくなってきた。先生ははるの額に触れ、その熱さに息をのんだ。このままでは危険だと判断した先生は、ためらうことなくはるの親に電話をかけた。はるの親が逮捕されたことは知っていたが、緊急事態だと考えたのだ。
しかし、電話は繋がらない。留守番電話になった。先生はメッセージを残し、すぐに病院へ連れて行く準備を始めた。はるを抱きかかえ、毛布でしっかりと包む。その小さな体は、驚くほど軽かった。
病院へ、そして先生の優しさ
先生ははるを連れて、夜間の救急病院へと向かった。車の中でも、はるは時折小さく嘔吐を繰り返した。先生は片手でハンドルを握りながら、もう一方の手ではるの背中をさすり続けた。
病院に到着すると、はるはすぐに診察室へ運ばれた。点滴が始まり、吐き気を抑える薬が投与される。少しずつ、はるの呼吸が落ち着いていくのを感じ、先生は安堵のため息をついた。
診察が終わると、先生ははるのそばに座り、その小さな手を握った。はるはまだ眠っていたが、その表情は少し穏やかになっていた。
「よく頑張ったな、はる。」
先生は静かにはるの頭を撫でた。先生の目には、はるへの深い愛情と、心配で疲弊しきった様子が浮かんでいた。しかし、その顔には、はるが回復してくれることへの強い願いが満ちていた。