菊は和室で、茶をすすっていた。
「…そういえば最近、運動をしていませんでしたね……このままだとカチコチのただのオタクになってしまいます…」
天気も良さそうですし…と己の中で理由を付け足し、散歩をしようと決めた。
これが全ての始まりとなった────
支度を済ませ、玄関で仕舞ってあったウォーキング用のシューズを取り出す。
そして菊は戸を開いた。
次の瞬間、晴天の中吹き荒れる風が……。
「………」
あ然とした菊は我に返り、部屋に戻ろうという考えが頭をよぎる。
「いけません…!日本男児たるもの、有言実行しなければ……!!」
葉たちがトルネードを続けるような強風が吹き続けている中、菊は猛進……することはなく、ゆっくり歩いていく。
「風……!!私はどんな困難にも立ち向かいます…!!!」
無茶とは自分でも分かっているが、ここまで来ると菊には止められなかった。
「はっ…!そういえば今日会議が…!!」
予定時刻は10時。そして現在の時刻は11時45分。
幸い菊の家近くに会場が設営されているため、戻るよりもこのまま進んだほうが近いと思った菊は、そのまま会場へと急いだ。
珍しく遅れてきた菊にその場の全員が目を向ける。
「はぁっ、遅れて、しまい、本当に、はぁっ、申し訳、ございません、はぁっ、……」
深々とお辞儀をした菊は、顔を上げるなり周りの面々の顔が驚き一色に染まっていることに気がついた。
「あぁ、全員揃っていると言っても時間ちょうどだから構わないが……」
とルートヴィッヒが目を逸らして口をつぐみ、
「なんか菊さ、垢抜けた〜?」
とフェシリアーノがルートヴィッヒの言いたいことを自分の言葉で言った。
「あか……ぬけ……?」
もちろん菊は何のことなのかさっぱり分からない。
「いつもと違う格好あるが、似合ってるある!」
という王耀の言葉により、さらに疑問になった。
「えっと、…私、垢抜けをしたり普段とは別の格好にしたりなどしたつもりはありませんが……」
「え?そうなの?
あ!もしかして、あの強風でかな?」
とイヴァンが当てる。
「…?よく分かりませんが、確かに強風の中歩いては来ました」
「じゃあお兄さんの鏡貸すから見てみなよ!」
と言われ、フランシスから手鏡を拝借する。
「………!!!!」
七三分けの髪に平装は少しはだけており、見るからに普段とは様子が違っている。
「し、失礼いたしました…!!///」
菊が手ぐしでまずは前髪から直そうとするが、その手をアーサーに止められた。
「今日ぐらい、この格好でもいいんじゃないのか?みんな気にしてないし」
「…少し恥ずかしいですが…そうですね、皆さんが気になさらないのなら……」
と、その話は完結し、会議が始まった。
会議が終わる頃には、もう菊にとって少し憎い強風は止んでいた。
「よかったじゃないかー!」
HAHA!といつものように陽気な雰囲気で言われた。
「そうですね……」
行きの努力も虚しく感じるほどぴったり止んでいて、悔しい思いに蓋をし、帰路についた。
コメント
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外出た瞬間終わったわ☆ すいませんやってみたかっただけです