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煉彩
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――理咲との食事完了。狙い通り神原新次郎に陶酔している。投資話にも乗ってきたから、ファンドアプリもスマホに入れさせた。勧めたファンドも買わせたよ。
――さすがね。こっちもいろいろあって……
事の顛末を簡潔に文章にして送った。
――沙耶もさすがだな 機転が利く
――天魔にレディースクリニックを紹介してもらっておいてよかったわ。言い訳がたったもの
――新宿は庭だから、協力してくれる人間は多い
――また困ったら助けてもらうね
保険をかけておいてほんとうに良かったわ。見つかりっこないと思わず、最善を尽くさなきゃ。やっぱり駅は人が多いし、誰がどこで見ているかわからない。自分の行動は、常に誰かが見張っていると思うくらいでなくちゃ。
――沙耶。来週の木曜日、時間作ってくれないか? 愛人を一緒に堕としに行こう
一緒にって……なにその面白い展開!
――ぜったい空けておく。何時にどこに行けばいい?
――18時にエンビルで待ってる
――わかった。必ず行くわ
決戦は来週の木曜日ね。理咲、涼二と一緒に私を嘲笑った罰は、しっかりと受けてもらうわよ!
※
あっという間に1週間が過ぎ、約束の木曜日となった。
通常通り仕事を終わらせ、エンビルへと向かった。遅刻はしたくないので、早めに退社できるように仕事を調整した。
理咲をこの手で堕とす瞬間に立ち会えるなんて、最高だわ!!
エンビルに到着したら、すでに貸し切りの札がかけられていた。重厚な扉を開けると、いつものバーの雰囲気ではなく、明るく店内が照らされていた。
カウンターの中央に座った天魔が私を手招きした。
「天魔、どうしたの?」
「今から沙耶のヘアメイクをする。その前に説明するよ」
天魔はスマートフォンを操作し、私に理咲とのやり取りを見せてくれた。
「沙耶が作ってくれたアプリで偽物の資産倍増を見させて、実際に金を引き出させて信じ込ませた。理咲は今、アプリ上で自分の資産が倍になったのを見て、完全に理性を失っている状態だ」
やり取りから理咲の心理状況を簡単に説明してくれた。
「今日は彼女にトドメを刺す。今から沙耶には『神原新次郎の妻』になってもらう」
天魔がカウンターの奥にかけられたドレスを見せてくれた。そこにあるのは、私が普段着るようなコンサバな服ではない。イヴヨンローランのワンショル漆黒ドレスに、ハリー・ヴィストンの大ぶりなネックレスにピアス。
渡したうちの経費から買ったんだろうけれど、すごい高級品ばかり……!
「これ買ったの?」
「いや、さすがに予算オーバーだから、ぜんぶレンタル」
「そっか……」
汚さないようにしなきゃ!
「私がこれを着て、あなたの妻になればいいのね?」
「ああ。理咲は承認欲求の塊だ。そんな彼女が一番嫉妬し、奪いたいと思うのは、自分が憧れる成功者の隣に座る、完璧な女だ。君がその役を演じることで、理咲の判断力を狂わせ、全財産を投資に注ぎ込ませるトリガーにする」
「なるほど。私に嫉妬させるのね」
「ああ。理咲を堕とすのは、沙耶自身に任せる」
天魔は私にその役をやらせることで、積もった恨みを晴らさせてくれるつもりなのだろう。どこまでも依頼人に寄り添ってくれる男ね。最高の演出をありがとう。
「どこからどう見ても、セレブで素敵な女性に仕上げてくれる?」
「もちろんだ。俺にできないことはない」
1時間後。鏡の中にいたのは、いつもの藤崎沙耶(わたし)ではなかった。
天魔は変装の名人だから、ヘアメイクもお手の物だった。
私はカラーコンタクトを入れられ、ハーフ感を演出、ブルーのカラーコンタクトだから冷徹な光を宿した瞳に見える。それは、誰もがひれ伏すような、圧倒的な勝者の女。
「完璧だ。これならたとえ友人でも君だと気づかないだろう。俺でもわからないくらいだ」
天魔が満足げに頷く。彼自身も仕立ての良いスーツを纏い、若き億万長者のオーラを放っている。時計を確認すると、19時を過ぎたところだった。
「待ち合わせは20時だ」
「行きましょう。理咲を、最高の処刑場へ案内してあげないと」
優雅に微笑んでみた。天魔が賞賛してくれた。
「どこからどうみても、気品のいいセレブ妻だ」
愛人を堕とすのは、この私。
面白いシナリオが描けそうな予感がした。
準備が整った私たちが向かった先は、西新宿の夜景を一望できる、超高級フレンチレストラン。今夜、ここは神原新次郎の名で、商談のために貸し切っている。
豪華な花が中央に鎮座している卓を囲んでいるのは、理咲と、彼女が連れてきた取引先の男性3人。彼らはみんなOTAの取引先の人間で、理咲にとっては「神原という凄腕投資家を紹介して、取引先からも神原からも、自分への信頼を盤石にする」目的があるんだと思う。
「理咲さん、ありがとうございました! 先日のあの銘柄、おかげさまで利益で新しい車が買えましたよ」
「理咲さんの審美眼は、デザインだけじゃなく投資も一流だね。このファンドは間違いない!」
男たちが口々に理咲を称賛する。彼女は、神原から渡された「偽アプリ」を彼らにも使わせ、天魔の操作による「偽の成功」を分配していた。彼らはすでに出金も経験し、理咲を「女神」のように崇拝している。その中心で、理咲はシャンパングラスを傾け、最高潮の優越感に浸っていた。
「そんな……。私はただ、新次郎さんの素晴らしいメソッドをみなさんと共有しただけです」
そろそろいいタイミングだろうと思ってふたりでその場に登場した。天魔曰く、大物は遅れていくのがセオリーらしい。というのも、その噂話を遠くから聞き、それによって今後の動きを判断するのだとか。
神原新次郎とその傍らで圧倒的なオーラを放つ、漆黒のドレスに身を包んだ私の登場だ。
待っていてね、理咲。――今、最高潮に輝いているその顔を、絶望に歪ませてあげるから。
コメント
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おおっ、沙耶がついに表舞台に出てきたね!天魔のヘアメイクで別人に変身するシーン、めっちゃカッコよかったわ🔥 「最高の処刑場へ案内してあげないと」って沙耶の台詞、鳥肌ものだよ…。理咲が今どんな顔してるのか、続きが気になりすぎる!