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「恵菜。誕生日おめでとう」
純は、華奢な両肩に触れ、真剣な眼差しで恵菜を貫くと、唇を引き結び、顔を俯かせた後、勢い良く顔を上げた。
「俺と同じ誕生日の恵菜との出会い。キザな言い方だけど…………俺は運命だと思ってる」
エキゾチックな恵菜の表情が、次第に瞳を見張らせていき、彼の眼差しから逸らそうとせずに、視線を交えていた。
「まだ恵菜と恋人同士になって、一ヶ月になってないけど…………俺は、これから先も、ずっと…………二人の誕生日を祝っていきたい」
彼女への想いを綴る声が震えそうになるのを、純は腹を据え、グッと堪えた。
「恵菜がバツイチなんて、俺には関係ない」
彼が徐にコートのポケットから、小箱を取り出す。
「恵菜。俺と…………結婚して欲しい」
純からの誕生日の言葉とプロポーズに、恵菜は、瞠目させながら口元を両手で覆った。
「じゅっ……純さ…………ん……」
恵菜の瞳が、ベイエリアの夜景に反射して輝きを増し、純だけを映し出している。
「それに、豪の家で会った時、恵菜は挙式をしていないって言ってただろ? 俺…………恵菜のウェディングドレス姿を見たいし、着させたい」
「私で…………本当に……いいんですか……?」
温和な声色で、なおも続く純のプロポーズに、彼女は嬉しさを噛みしめているのか、眉尻を下げている。
「恵菜でいい、じゃなくて、恵菜がいいんだ。俺…………恵菜と一緒にいると…………安心するっていうか…………ホッとするんだ」
真摯に紡がれていく彼の想いに、澄んだ瞳から涙が滲み、頬を伝っていくのが見えた。
「恵菜。俺の妻に…………なってくれるか?」
「…………は……い。よろしく…………お願い……しま……す……」
彼女が深々と純にお辞儀をすると、彼は恵菜の左手を取り、手の甲に唇を落とした。
クルーズ船は、いつしかレインボーブリッジの真下を潜り抜け、大きく旋回させた後、再び眩い虹の橋へ向かって航行していく。
純が、手にしていた小箱を開き、恵菜に見せた。
深紅の小さなジュエリーボックスには、リング一周にダイヤモンドが埋め込まれてある、プラチナのエタニティリングが煌々と輝きを放ちながら納められている。
純がいつか恵菜を抱き倒した時、寝ている間に、こっそりと左手の薬指のサイズを測っておき、購入したリング。
燦然としたリングを見やりながら、純は微笑んだ。